ムラサキカビモドキ(読み)むらさきかびもどき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ムラサキカビモドキ」の意味・わかりやすい解説

ムラサキカビモドキ
むらさきかびもどき
[学] Polysphondylium violaceum

細胞粘菌類タマホコリカビ目のタマホコリカビ科ムラサキカビモドキ属の菌類をいう。この属は胞子が発芽して生じた細胞壁のない単細胞体が栄養体で、これは粘菌アメーバといわれ、糸状の偽足(ぎそく)がある。粘菌アメーバは分裂して増殖し、やがて流れをつくって集合し、偽変形体といわれる白色の細胞集団をつくる。この細胞集団はゆっくりと移動したあと、中心部に突起ができ、これが伸びて、高さ約1センチメートルの子実体の柄(え)を構成する。この柄は、セルロース性の鞘(さや)で包まれて空胞化した細胞群からなり、柄の途中の数か所から輪生する3、4本の淡紫色小枝を生ずる。他の粘菌アメーバ集団は柄の主軸と小枝の先にあって、淡紫色で球状の胞子塊をつくる。これは粘液に包まれている。このような子実体は動物の糞(ふん)などに生ずる。偽変形体は環境が悪化するとマクロシスト(大包嚢(だいほうのう))を形成するが、この過程で有性生殖があるといわれる。

[寺川博典]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ムラサキカビモドキ」の意味・わかりやすい解説

ムラサキカビモドキ
Polysphondylium violaceum

細胞性変形菌類うち最も大きくなる種。ソロフォア sorophoreという子実体は,ときに長さ 10cmをこえ淡紫褐色を呈し,5~7段またはそれ以上の輪生枝を生じる。主軸の頂端および輪生枝端に胞子塊をつける。土壌微生物や糞生微生物を採取中に見出されることが多い。

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