ムックリ

デジタル大辞泉 「ムックリ」の意味・読み・例文・類語

ムックリ

アイヌの民族楽器口琴こうきん一種。細長い竹の板の中央舌状の弁を切り出し、ひもを付けたもの。口にあててひもを引いて弁を振動させ、口腔内に共鳴させて奏する。

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精選版 日本国語大辞典 「ムックリ」の意味・読み・例文・類語

ムックリ

〘名〙 (アイヌ語から) アイヌの民族楽器。長さ一五センチメートル、幅一・五センチメートル前後の細長い竹の薄い板の中央を切り出して簧(した)とし、紐をつけて口もとで引いて鳴らす。口腔内の共鳴で数音を出す。世界に広く分布するジューズハープ口琴)の一種。
※君の名は(1952‐54)〈菊田一夫〉三「母か祖母から教えられたのだろう…アイヌが昔からやる、ムックリを奏き鳴らしている姿をみることがある」

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改訂新版 世界大百科事典 「ムックリ」の意味・わかりやすい解説

ムックリ

アイヌの体鳴楽器で,世界中に広く分布する口琴の一種。形態,奏法ともにシベリアに分布する口琴に近い。長さが10~15cm,幅1.5cm,厚さ0.5cmくらいの竹の小片の中央に舌状の弁が切り込まれている。演奏の方法は,この楽器を横にして口に軽くくわえ,弁の根元の孔に通してある紐を強く引っ張って弁を連続的に振動させる。この振動が口腔に共鳴し,口腔の大きさや,呼気・吸気の強さを加減することによって,音色に微妙な変化が与えられる。古くは踊りや歌の伴奏楽器としても使用されていたようであるが,近年ではもっぱら独奏楽器として婦女子に使用されている。曲目は《エタシペ・ハウェ(海馬(とど)の鳴声)》《コイ・フム(波の音)》など,自然の音響をまねたものが多い。竹製が本来のものであるが,樺太サハリン)では,江戸時代に本土でも流行した〈ビヤボン〉と称する馬蹄形鉄製口琴も用いられていた。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ムックリ」の意味・わかりやすい解説

ムックリ
むっくり
mukkuri

アイヌの口琴(こうきん)。長さ15センチメートル、幅1~1.5センチメートル、厚さ2~5ミリメートル程度の竹の小片の中央部を細長く舌状に切り込んで振動弁とし、弁の基部に穴をあけて短い棒(約3センチメートル)をつけた紐(ひも)を結ぶ。奏者は、左手指で楽器を持って振動弁の先端付近を口に当て、右手指で棒を持って紐を引っ張ったり緩めたりしながら弁を振動させ、その音を口腔(こうこう)内で共鳴・増幅させる。おもに女性用の独奏楽器で、口腔の形の変化や呼吸法の調節によってさまざまな音高、音色を出す。雨音や鳥の声など自然界の音を模倣する場合が多い。

[山田陽一]

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百科事典マイペディア 「ムックリ」の意味・わかりやすい解説

ムックリ

アイヌの口琴。ムックル,ムックナとも。竹製のトプ・ムックリは,長さ約15cm,幅約1.5cmの細長い竹片に切り込みを入れて細長い弁を作り,弁の根元にとりつけた紐を強く引っ張って振動させ,口腔に共鳴させる。鉄製のカネ・ムックリは,馬蹄形の鉄の枠に細長く薄い鉄の弁の一部を固定し,弁の先端を指ではじいて振動させ,口腔に共鳴させるもので,樺太(サハリン)で多く使われていた。古くは踊りの伴奏にも用いられたが,近年では女性が独奏に用い,自然界の音を模倣描写することが多い。

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