ムクドリモドキ(読み)むくどりもどき(英語表記)icterid

改訂新版 世界大百科事典 「ムクドリモドキ」の意味・わかりやすい解説

ムクドリモドキ (椋鳥擬)
icterid
American oriole

スズメ目ムクドリモドキ科Icteridaeの鳥の総称。この科は約25属91種からなる。新世界の特産で,アラスカから南アメリカの南端まで分布しているが,大部分の種は熱帯亜熱帯アメリカに生息している。北アメリカで繁殖する種の多くは渡り鳥で,冬季中央・南アメリカで越冬する。全長17~55cm。小型のものはホオジロ大の小鳥だが,大型の種はカラスほどの大きさがある。くちばしはやや細長い円錐形で,じょうぶで先がとがっている。オロペンドラ(英名oropendola)やカシーク(英名cacique)のなかまは,くちばしの基部が額にまでのび,額板を形成する。羽色は,オナガムクドリモドキ(英名grackle)やコウウチョウ(英名cowbird)では黒色褐色だが,多くのものは黒色と赤色,黄色,橙色,褐色,栗色などとを組み合わせた比較的はでな色をしている。雌雄はふつう異色で,また雄のほうが雌より大きい。

 ムクドリモドキ類は,森林草原,農耕地や果樹園,湿地,砂漠などさまざまな環境にすみ,広く適応放散しているので,習性や繁殖生態は種によって非常に異なる。食物は雑多で,地上で採食するものも樹上で採食するものもあり,一般に種子,果実,昆虫類,小動物などを食べ,ムクドリモドキ属Icterusやオロペンドラ類Psarocoliusは花みつも好む。社会生活は,つねに単独かつがいでいるものと,群れで生活し,集団繁殖するものとがある。集団繁殖するなかまは一般に一雄多雌で,またコウウチョウ属Molothrusは乱婚で托卵の習性がある。巣もきわめて変化に富み,簡単なものはわん形の巣を草原の地面ややぶの中につくるが,枝から垂れ下がったみごとな袋状の巣をつくるものもある。とくにオロペンドラ類の集団営巣地では,2mに及ぶ袋状の巣が100個も垂れ下がり,壮観である。一般に営巣や抱卵は雌の役目で,一雄一雌の種でも雄は補助的な役をするにすぎない。1腹の卵は熱帯では2~3個,温帯地方では5~6個。抱卵期間は11~14日。多くのムクドリモドキ類は,鳥の中でもすぐれた歌い手といわれている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ムクドリモドキ」の意味・わかりやすい解説

ムクドリモドキ
Icteridae; oropendolas, orioles, blackbirds

スズメ目ムクドリモドキ科の鳥の総称。オオツリスドリ属,ツリスドリ属,ムクドリモドキ属,マキバドリ属,クロムクドリモドキ属,コウウチョウ属など 27属,約 110種からなる。全長 15~52cm。ムクドリという名がついているが,ムクドリ科に類縁が近いわけではなく,コウカンチョウ類などフウキンチョウ科に近縁と考えられている。羽色は黒,黄,赤,橙黄,オリーブ,褐色などいろいろである。生息地は草原から森林まで含まれ,繁殖は一夫一妻から一夫多妻,集団繁殖,托卵性のものまである。巣の形態は普通の椀状のものから吊り巣まで,食性は昆虫食,種子・穀類食,果実食と多様であり,一科のなかで著しい適応放散がみられる。すべて南アメリカ北アメリカに分布しており,特に亜熱帯熱帯に多く,温帯にすむ種は越冬のために南部に渡る。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ムクドリモドキ」の意味・わかりやすい解説

ムクドリモドキ
むくどりもどき
icterid

鳥綱スズメ目ムクドリモドキ科に属する鳥の総称。この科Icteridaeは、北アメリカから南アメリカに及ぶ新世界に分布し、112種を含む大きいグループである。森林から草原までいろいろの所にすみ、生活、形、色など著しく多様化している。全長20~53センチメートル、どの種もじょうぶな足をもっていて、もともとは地上性である。嘴(くちばし)は鋭くとがった円錐(えんすい)形で、体にはでな飾りや色のついたものがある。多くは輝いた黄色の羽毛をもっていて、一般に森林性のものが多く、また群れをつくる種も多い。ツリスドリのようにりっぱな巣をつくるものから、コウウチョウ類cowbirdsのように寄生するものまである。ハゴロモガラス類American blackbirdsは雄が黒くブラックバードの名があるが、ヨーロッパのブラックバード(ツグミ科のクロウタドリ)とは異なる。このハゴロモガラス類は全長18~28センチメートルで、ムクドリモドキ科のなかではもっとも社会性が強く、大集団で繁殖し、湿地や淡水面に生ずる草原にすみ、低木林にコロニーをつくる。

[中村登流]

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