ムギ(麦)(読み)ムギ

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ムギ(麦)」の意味・わかりやすい解説

ムギ(麦)
ムギ

コムギ wheat,オオムギ barley,ライムギ rye,エンバク(→カラスムギ)oatなどのイネ科穀物の総称。日本では古来,農作物の中心は米すなわちイネであり,それ以外を雑穀として扱ってきたため,「ムギ」は日本独特の表現であり,英語でこれに対応することばを見つけるのは難しい。いずれも中央アジアから西アジアにかけての乾燥地帯の原産で,生育は乾燥と低温に適する。秋に種子が芽生え,冬を幼植物で越し,春にを出して開花結実し,夏の高温期に枯死する,温帯の冬畑作物の典型。コムギとオオムギは人類が農業を始めた古代からの作物で,ライムギとカラスムギはそれらの畑の雑草がしだいに栽培されるようになったといわれる。コムギとオオムギは主食とされたが,中世頃からコムギを用いたパンがその座を占めるようになると,オオムギ,ライムギ,カラスムギは飼料用となった。飼料としてはデンプン蛋白質,脂肪分に富み栄養価に優れ消化もよく,世界的に重要。日本には 3~4世紀に中国から朝鮮経由でコムギとオオムギが相次いで伝来した。諸外国と異なり,畑作のほかに水田裏作としても栽培され,農家近年までイネを租税商品作物として,ムギを自家用食糧として栽培した。ライムギとカラスムギは明治期以降に導入されたが,食糧としては定着せず,飼料用に少量が栽培されるにとどまった。アメリカ大陸では 16世紀までムギ類の栽培はまったくみられなかったが,ヨーロッパからの移民によってもたらされて以降,今日では一大生産地となった。

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