ムガベ政権/ジンバブエ(読み)むがべせいけん/じんばぶえむがべせいけん(英語表記)Robert Gabriel Mugabe

知恵蔵 「ムガベ政権/ジンバブエ」の解説

ムガベ政権/ジンバブエ

アフリカ南部、ジンバブエの大統領ロバート・ムガベは1924年生まれ。イギリスに対する反植民地闘争の指導者で、80年の独立時には首相、共和制に移行した87年には初代大統領に就任した。独立当時、ジンバブエはサブサハラ有数の工業生産を誇り、白人農園による農業生産性も高かった。だが、ムガベ政権は白人から黒人への農地再分配を促進させようと、92年に「土地収用法」を制定。2000年以降は、白人農場を強制没収し、黒人を移住させるという強硬策をとった。白人支配からの脱却という名目があったものの、これにより農地が荒廃し、農業生産は著しく低下した。さらに政権内で汚職が横行し、言論統制や反政府運動への武力弾圧も激化。こうした圧政に国際社会の批判が高まり、旧宗主国イギリスも支援を打ちきったため、財政悪化にいっそうの拍車がかかった。近年は、年数十万%という驚異的なインフレが続き、経済は壊滅的状況。周辺諸国へ脱出する国民も急増している。こうしたなか08年6月に大統領選が実施され、ムガベは5期目の「当選」を宣言した。だが、野党MDC(ツァンギライ議長の民主変革運動)の幹部拘束、野党支持者への露骨な脅迫や暴行事件が続発誘拐殺人も横行したことから、欧米諸国は「偽りの選挙」と激しい非難を浴びせている。当初AU(アフリカ連合)も選挙の正当性に疑問を呈したが、翌7月に開催されたAU首脳会議の席では、反植民地闘争のかつての「英雄」を正面から批判する声は出なかった。

(大迫秀樹 フリー編集者 / 2008年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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