ムイッズアッダウラ(英語表記)Mu`izz al-Dawla

改訂新版 世界大百科事典 「ムイッズアッダウラ」の意味・わかりやすい解説

ムイッズ・アッダウラ
Mu`izz al-Dawla
生没年:?-967

ブワイフ朝イラクケルマーンを支配した最初の君主在位,イラク945-967,ケルマーン936-949)。同朝を創設したダイラム人の3兄弟の末弟にあたる。本名はアフマド。ムイッズ・アッダウラとは,946年にアッバース朝カリフから授与された称号で,〈王朝の強化者〉の意。以後,彼は生涯大アミール(アミール・アルウマラー)の地位にあった。業績としては,奴隷軍の整備による支配権力の確立,軍事イクター制の施行,文人の保護による宮廷文化の発展などが挙げられる。また十二イマーム派の立場から,預言者ムハンマドがアリーを正式の後継者として指名したとされるガディール・フンムGhadīr Khummの誓いの記念行事とアーシューラーの行事とを,バグダードで初めて公式に行ったことは重要である。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のムイッズアッダウラの言及

【ブワイフ朝】より

ダイラム人の族長ブワイフの3人の息子は,ジヤール朝のマルダーウィージュに仕えて勢力を伸ばし,イスファハーン,ジバール,ケルマーンおよびフージスターンで独立した。946年(945年説もある),末弟アフマドはバグダードに入り,アッバース朝カリフより,アミール・アルウマラー(大アミール)に任命され,ムイッズ・アッダウラ(王朝の強化者)の称号を,また2人の兄も,それぞれカリフから称号を与えられた。ブワイフ朝はシーア派の十二イマーム派に属していたが,スンナ派のカリフを保護することによってその支配の正当化を図ったので,宗教的権威としてのアッバース朝カリフと,世俗権力としてのブワイフ朝アミールの共存する二重構造が生じた。…

※「ムイッズアッダウラ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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