日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミール(インドの詩人)」の意味・わかりやすい解説
ミール(インドの詩人)
みーる
Mīr
(1722―1810)
インドのウルドゥー語詩人。アグラに生まれる。10歳で孤児となり、デリーに移った。叙情詩(ガザル)にとくに優れ、後代のガーリブとあわせてガザルの二大巨匠と称される。60歳のときにラクナウに移ったが、一生を不満のうちに過ごした。彼の詩は人生への懐疑や厭世(えんせい)感を格調高い簡潔な表現と、流れるように美しい韻律で表しているところに大きな特徴がある。『ミール詩全集』は多くの異本が出版され、広く愛読されている。彼自身がペルシア語で書いた『詩人評伝』(1751)はウルドゥー語詩人103名を扱い、最初のウルドゥー詩人伝として文学史上にきわめて重要な作品である。
[鈴木 斌]