ミル(海藻)(読み)みる

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミル(海藻)」の意味・わかりやすい解説

ミル(海藻)
みる / 海松
[学] Codium fragile Hariot

緑藻植物、ミル科の多年生海藻。鮮緑色で、叉(さ)状分岐を繰り返し、フェルト様手ざわりの丸紐(まるひも)状枝からなる分枝体。体高の多くは20センチメートル以内であるが、30~40センチメートルほどに成長するものもある。外見上は分岐を繰り返す微細糸枝が無数、密に絡み合っているだけだが、細かくみると、糸枝には隔壁がなく、全体の原形質が連なる非細胞構造体となっている。温海性の海藻で、湾口部の干潮線直下から30メートル前後の海底にまで生育する。分布は日本の全沿岸のほか、世界各地と広い。日本では古くから知られ、親しまれてきた海藻の一つで、『万葉集』のなかにも詠まれている。現在の日本では、ミルをあまり食べないが、ハワイではリムlimuの名で野菜サラダ同様に愛好しているし、インドネシアフィリピンなどでも食品とされている。

 ミル属中には、体形の違う多くの種があるが、比較的よく見受けられるものに、体長が5~10メートルになるナガミルC. cylindricumとクロミルC. divaricatum(地方名サメノタスキ)、扁平(へんぺい)で薄いフェルト片状になるヒラミルC. latum、岩上にへばりつくハイミルC. adhaerensなどがある。このほかミル属には、40~50メートルの深海産で小球状となるタマミルC. mamillosum、タマミルに似るが不定形の球塊状となるコブシミルC. pugniformisなども含まれる。

[新崎盛敏]


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