ミトコンドリア脳筋症(読み)ミトコンドリアノウキンショウ(英語表記)Mitochondrial encephalomyopathy

デジタル大辞泉 「ミトコンドリア脳筋症」の意味・読み・例文・類語

ミトコンドリア‐のうきんしょう〔‐ナウキンシヤウ〕【ミトコンドリア脳筋症】

ミトコンドリア病

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

六訂版 家庭医学大全科 「ミトコンドリア脳筋症」の解説

ミトコンドリア脳筋症
ミトコンドリアのうきんしょう
Mitochondrial encephalomyopathy
(脳・神経・筋の病気)

どんな病気か

 筋肉エネルギー源は、筋細胞内に蓄積されたグリコーゲン中性脂肪です。脂肪は細胞内のミトコンドリアのなかで代謝されて、アデノシン三リン酸ATP)を作り出す源となります。とくに、マラソンのような持続的な運動に使用されるエネルギー源が脂肪です。

 したがって、ミトコンドリアが異常になるとエネルギー代謝がうまくいかず、運動異常が現れることになります。ミトコンドリアは全身の細胞にあるので、筋肉だけではなくほかの場所の機能異常も現れます。脳神経と筋細胞のミトコンドリア異常が主にみられる病気がミトコンドリア脳筋症です。

 さまざまな病気が報告されていますが、主な病型は次項で述べる3つです。ミトコンドリアのDNA異常で発症する病気は、母系遺伝(体細胞遺伝)で子孫に伝えられます。脳筋症では、ミトコンドリアのDNA異常があることが明らかになりました。

 いずれの病型にも決定的な治療法はありません。

主なミトコンドリア脳筋症

①カーンズ・セイヤー症候群(慢性進行性外眼筋麻痺(まんせいしんこうせいがいがんきんまひ):KSS)

 この病気は眼球運動麻痺、心伝導障害に網膜(もうまく)色素変性症を伴った病気です。3つの症状が常にそろうわけではありません。ミトコンドリアDNAの一部が欠けています。

脳卒中様(のうそっちゅうよう)発作を伴うミトコンドリア脳筋症(メラスMELAS

 脳卒中のような症状と高乳酸血症を示し、若年で発症します。低身長で筋力低下がみられます。ミトコンドリアDNA内のロイシンtRNAの点変異(DNAの1塩基の欠失置換、挿入のこと)が、日本の研究者によって明らかにされました。また最近、日本でL-アルギニン療法が提唱されて注目されています。

③ミオクローヌスを伴うミトコンドリア脳筋症(福原病(ふくはらびょう)MERRF

 このタイプは小脳症状、ミオクローヌス不随意(ふずいい)運動の一種)、筋症状、てんかんが主な症状です。この病気もミトコンドリアDNAのリジンtRNA内の点変異で起こります。

石原 傳幸

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

家庭医学館 「ミトコンドリア脳筋症」の解説

みとこんどりあのうきんしょう【ミトコンドリア脳筋症 Mitochondrial Encephalomyopathy】

[どんな病気か]
 細胞内においてATP(アデノシン三リン酸(コラム「筋肉エネルギー代謝のしくみ」))をつくり出すミトコンドリアの異常によっておこる、エネルギー代謝(たいしゃ)の異常疾患の1つで、いくつかの病型があります。
 進行性外眼筋(しんこうせいがいがんきん)まひ(KSS)は、目が動かない、眼瞼下垂(がんけんかすい)などの症状を示します。MELAS(メラス)は、ほとんどが子どものころに発症し、低身長(ていしんちょう)で発作的に嘔吐(おうと)したり、脳卒中(のうそっちゅう)のような症状をみせます。MERRF(マーフとか福原病(ふくはらびょう)ともいう)は、遺伝性で、小脳障害とてんかんがおもな症状です。
[原因]
 ミトコンドリアは、通常の遺伝子(核内DNA)と母親のみから伝えられるミトコンドリアDNAによってつくられます。このミトコンドリアDNAの欠失(けっしつ)や点変異(てんへんい)(「筋ジストロフィー」の遺伝子の異常や欠損が原因を参照)などの異常が原因です。したがって、遺伝性の場合は母型遺伝形式です。
[治療]
 脳代謝改善薬のイデベノンや強心薬ユビデカレノンなどの大量使用が有効とされています。

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