ミズヒキゴカイ(読み)みずひきごかい

改訂新版 世界大百科事典 「ミズヒキゴカイ」の意味・わかりやすい解説

ミズヒキゴカイ (水引沙蚕)
Cirriformia tentaculata

多毛綱ミズヒキゴカイ科に属する環形動物。日本各地そして世界各地に分布し,海岸のやや有機質の多い砂泥地に潜って生活する。体は橙色で背中側が盛り上がり,腹面は扁平。長さ6~15cm,幅5mm。長さの短い約300ほどの体節からなる。頭部は円錐状で,触手や眼点はない。第1剛毛節から体両側のいぼ足の背方に糸状の鰓糸(さいし)が生ずるが,後方になるにつれてまばらになる。第5~6剛毛節か第6~7剛毛節の背側部に約20本ほどの紅色の感触糸が群れになって生じ,生時には海底の上にだして呼吸している。いぼ足の発達は悪く,針状剛毛と単一鉤状剛毛とがある。産卵期は5~6月で,棲管(せいかん)の入口付近に柔らかい粘液質卵塊を産みつける。

 近縁種のチグサミズヒキCirratulus cirratusは体が比較的細く,感触糸が第1剛毛節より生ずることで容易に区別できる。また近縁Chaetorone属,Tharyx属,Timarete属などの属のものも何種か発見されている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミズヒキゴカイ」の意味・わかりやすい解説

ミズヒキゴカイ
みずひきごかい / 水引沙蚕
[学] Cirriformia tentaculata

環形動物門多毛綱定在目ミズヒキゴカイ科に属する海産動物。日本および世界各地の海岸に分布し、有機物の多い泥の中にすむ。体を砂泥中に埋め、糸状で黄色の感触糸と紅色の鰓糸(さいし)を水中に出して動かしているところからこの名がある。体は円筒形で軟らかく黄橙(こうとう)色。長さ6~15センチメートル、幅4~5ミリメートルで、体節は約300節。体の前部背面に約20本ほどの感触糸の束が1対あり、また各体節の両側から1本の鰓糸が生じている。近似種のチグサミズヒキCirratulus cirratusは、同じような場所にすむが、頭部に赤い眼点が4~8個斜めに1列に並び、感触糸の束が第1剛毛節にあることで区別される。

[今島 実]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ミズヒキゴカイ」の意味・わかりやすい解説

ミズヒキゴカイ
Cirriformia tentaculata

環形動物門多毛綱定在目ミズヒキゴカイ科。体長6~15cm,体節数約 300。体は橙黄色で比較的太く,頭部は円錐形で眼をもたない。体の両側にある糸状鰓糸は第1剛毛節から始り,体前部に多く,体後部へいくにつれて次第にまばらになる。感触糸は第5~6,または第6~7剛毛節の背側の左右に約 20本ずつ群生している。鰓糸,感触糸とも紅色。潮間帯から水深 100mまでの有機質の多い砂泥中にすみ,砂泥底上に多数の感触糸を広げている。北海道南西部以南に普通に分布する。

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