日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミズナラ」の意味・わかりやすい解説
ミズナラ
みずなら / 水楢
[学] Quercus crispula Bl.
Quercus mongolica Fisch. var. grosseserrata Rehd. et Wils.
ブナ科(APG分類:ブナ科)の落葉高木。コナラ、ナラガシワとともに、単にナラとよぶことがある。高さ25メートル、直径1.5メートルに達する。樹皮は灰褐色で深い不規則な裂け目がある。形態は全般的にコナラに似るが、葉は長さ8~14センチメートルと大きく、逆に葉柄は2ミリメートル以下と短い。堅果は卵状楕円(だえん)形で、1.5~2.5センチメートル、濃褐色に熟し、殻斗(かくと)は椀(わん)形で小鱗片(りんぺん)を密布し、堅果の2分の1ほどを包む。ブナとともに日本の温帯林の優占種となり、果実はクマ、サル、リス、ネズミ類、カケスまたシギゾウムシ類の餌(えさ)となっている。陽樹であり、森林内には稚樹はほとんど育たないが、日当りがよく、土の深い緩斜面では初期成長は旺盛(おうせい)である。樹齢は普通300年以上と長い。鹿児島県高隈(たかくま)山を南限とし、北海道まで広く分布する。母種とされたモンゴリナラQ. mongolica Fisch.は、本州北部、北海道、および千島列島、朝鮮、樺太(からふと)(サハリン)、東シベリアに広く分布する。変種のミヤマナラvar. horikawae H.Ohba(var. undulatifolia Kitam. et Horik.)は日本海型気候の多雪地の急斜面に生育し、幹は伏臥(ふくが)し低木状になる。
材は重硬で、心材は黄褐色、髄線などの木理も美しく、昔はヨーロッパに家具材として輸出されていた。近年は日本でも高級家具材として貴重な存在になってきた。名は、材に水分が多く、燃えにくいことからきたという。樹皮は厚く、カシワとともに山火事跡地に成林することも多い。
[萩原信介 2020年1月21日]