ミクロトーム(英語表記)microtome

翻訳|microtome

デジタル大辞泉 「ミクロトーム」の意味・読み・例文・類語

ミクロトーム(〈ドイツ〉Mikrotom)

顕微鏡観察する動植物体の組織切片を作成するための切断器械。数~数十マイクロメートル程度の薄さに切ることができる。マイクロトーム

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精選版 日本国語大辞典 「ミクロトーム」の意味・読み・例文・類語

ミクロトーム

〘名〙 (Mikrotom) 顕微鏡標本を作るために材料一定薄片に切断するための器械。マイクロトーム。
詩人生涯(1951)〈安部公房〉「あるものはミクロトームでけずった象牙のようにほのかに白く」

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改訂新版 世界大百科事典 「ミクロトーム」の意味・わかりやすい解説

ミクロトーム
microtome

ミクロmicroは微細,トームtomeは切断の意。顕微鏡観察用プレパラートを作るために生体組織を薄い切片とするための装置。目的によって各種のミクロトームが考案されている。植物体の解剖学的観察のための切片は,生のままの組織を固定して徒手で切片とするハンドミクロトームや,鋼鉄の刃をすべらせて切断するスライディングミクロトームを用いて作る。動物組織を化学的処理を経ることなく切片とするためには,組織を凍結したまま切断する凍結ミクロトームが用いられる。組織や細胞の微細構造の観察を目的とするばあいは,試料パラフィンなどに包埋し,一定の距離(μm単位のオーダー)ずつ移動する鋼鉄の刃を上下させる回転ミクロトームで切断し,2~20μmの薄い連続切片を作ることができる。電子顕微鏡用には20~100nmの超薄切片が必要で,ガラスまたはダイヤモンドで作った刃を用いるウルトラミクロトームが使われる。
顕微鏡
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミクロトーム」の意味・わかりやすい解説

ミクロトーム
みくろとーむ
microtome

動植物の器官や組織、胚(はい)などの標本を薄切するのに用いられる器械。動植物の体は多数の細胞から成り立っているので、体の成り立っているようすを知るためには、細胞の形態配列の仕方、細胞間物質の様態などを調べる必要がある。このために組織学では、各種の標本をおよそ細胞一層分の厚さ(数マイクロメートル)に薄切し光学顕微鏡で調べる。いろいろな形式のミクロトームがあるが、いずれも三つの部分から成り立っている。鋭い刃(およびこれを保持する部分)、この刃を標本に向かって、あるいは刃に向かって標本を駆動する部分、標本をある定められた厚さに送り出す部分である。数マイクロメートルという微細な厚さを送り出すためには、斜面やねじが巧妙に組み合わされて使われる。とくに、垂直に固定された刃に向かって標本を押し下げて切り、ふたたび標本を持ち上げるための力を利用して、標本台に直結しているピッチのごく小さな精密なねじをわずかに回転前進させ標本を送り出す方式のものが使われることが多い。電子顕微鏡による観察に必要な薄さ(10分の1マイクロメートル以下)の切片を得るのには超ミクロトームが使われる。

[竹内重夫]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ミクロトーム」の意味・わかりやすい解説

ミクロトーム
microtome

透過顕微鏡標本 (プレパラート Präparat) をつくるため鋭利な鋼刃で生物体組織を薄く切る装置。材料は,均等な厚さに切るため,場合に応じてパラフィンなどの中に固定,または圧縮炭酸ガスを吹きつけ凍結しつつ切る。この材料処理方式,また刃または試料の送り方式,切断方式などの相違で,数種の型がある。切断厚さは機械送りでは1μmが限度で,通常3~30μm程度。電子顕微鏡標本では電子透過のため厚さ 0.2μm以下が望ましいので,送りに金属の熱膨張を利用して押すなど特殊な考案がなされ,刃はガラス刃とする。これを超ミクロトームという。なお,岩石鉱物なども透過標本につくられるが,一般にもろくて切れないので厚いものを研磨して薄片とする。

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百科事典マイペディア 「ミクロトーム」の意味・わかりやすい解説

ミクロトーム

顕微鏡標本を作るために生物組織を薄く切断する装置。組織はあらかじめ凍結するか,パラフィンやセロイジンなど切りやすい物質中に包埋する。ミクロトームは刃を動かす方式と,組織塊を上下させる方式とに大別され,また包埋剤の種類などによっていくつかの型が区別される。切片の厚さは普通5〜20μm。電子顕微鏡用の厚さ0.05μmくらいの切片を作るにはガラス刃,ダイヤモンド刃を用いたウルトラミクロトームが使われる。

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栄養・生化学辞典 「ミクロトーム」の解説

ミクロトーム

 顕微鏡での観察のための試料を作成するため,試料を薄い切片に切る装置.

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世界大百科事典(旧版)内のミクロトームの言及

【マイノット】より

…ハーバードで組織学,発生学を研究し92年同教授。1886年顕微鏡用の切片標本を作るための自動回転式ミクロトームを発明し,広く各国で使用された。97年全米科学アカデミー会員に選ばれ,また全米科学振興協会など多くの学会の会長を務めた。…

※「ミクロトーム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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