マーモット(英語表記)marmot
Marmota marmota

精選版 日本国語大辞典 「マーモット」の意味・読み・例文・類語

マーモット

〘名〙 (marmot)
① リス科マーモット属の哺乳類の総称。体長五〇~六〇センチメートル。耳は小さく、尾は房状。リスの仲間であるがほお袋はない。毛色は赤茶・黄土色黒色が交じる。北アメリカおよびアルプスからヒマラヤにかけて分布。岩地や草原で群れで穴居生活をし、植物の根や種子を食べる。アルプスマーモットウッドチャックタルバガンなど多くの種がある。
ヨーロッパマーモット異名。アルプス、ピレネーなどヨーロッパの山岳地域に生息する。アルプスマーモット。

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デジタル大辞泉 「マーモット」の意味・読み・例文・類語

マーモット(marmot)

リス科マーモット属の哺乳類の総称。ウサギ大でずんぐりし、褐色。日中活動する。地中や岩の間などに巣を作り、その出入り口に後肢で立ち、たたずむ習性がある。アルタイ地方に生息するタルバガンや北アメリカのウッドチャックなど。

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改訂新版 世界大百科事典 「マーモット」の意味・わかりやすい解説

マーモット
marmot
Marmota marmota

齧歯(げつし)目リス科の哺乳類。別名,アルプスマーモット,ヨーロッパマーモット。アルプスを中心に,ピレネー山脈,カルパティア山脈タトラ山脈などのヨーロッパの山岳地帯に生息する半ば地下性の大型のリスの一種。ずんぐりした体軀(たいく)に短く太い四肢をもち,手足のつめは強大で穴掘りに適する。耳は小さく,尾は短い。体長50~60cm,尾長13~16cm,体重4~8kg。体色は暗褐色ないし赤褐色

 ふつう高山の南向きの斜面の草原に,長さ10~70mの複雑なつくりのトンネルを掘って家族群ですむ。昼行性で,草の葉,実,根などのおもに植物質を食べる。夏の間にたくさんの草をかみとって,乾燥し,秋にそれを巣に運び込んで,家族全員がいっしょに丸くなって冬眠する。冬眠用の巣は,地下5~7mの深所につくられる。冬眠前に体重の20%程度の脂肪を身につけてまるまると太るが,この脂肪はかつて肺病の特効薬として珍重された。雌は,妊娠期間30~32日で,春に2~7子を生む。誕生時の子は体重30g程度。39日で巣穴から顔を出すまでに成長する。寿命は13~15年。近縁種ボバックウッドチャックなどがある。なお,南アメリカにすむモルモットは,姿が本種に似ているために植民者が誤認して呼んだことから名付けられた。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「マーモット」の意味・わかりやすい解説

マーモット
まーもっと
marmot

哺乳(ほにゅう)綱齧歯(げっし)目リス科マーモット属に含まれる動物の総称。この属Marmotaの仲間は、太くずんぐりした体に短い尾をもった大形の地上生リスで、体長30~60センチメートル、尾長10~25センチメートル、体重3~7.5キログラムに達する。体色は明るい茶黄色から暗褐色。普通、草原の地中にトンネルを掘って巣とし、数頭から、ときに50頭を超す集団をつくって暮らす。木にはほとんど登らない。昼行性で、相互のコミュニケーションにさまざまな音声とにおいを使う。ヨーロッパ・アルプスなどの高山草原にすむアルプスマーモットM. marmota(単にマーモットともよばれる)のほか、ネパール、シッキムなどの高山にすむタルバガンM. bobak(ボバックともいう)、北アメリカのアラスカからアメリカ東部にかけてすむウッドチャックM. Monaxなど10種余りがユーラシアから北アメリカに分布する。いずれの種も植物の葉などの緑色部分をおもな食物とし、夏季に大量に食べて体に脂肪として蓄え、冬季はときに9か月に達する長い冬眠で過ごす。ほかにキノコ類、昆虫なども食べる。冬眠から覚めてすぐの4~5月に交尾し、雌は妊娠期間30~32日で普通2~5子を産む。子は6週間で巣穴から外に出るようになり、2年で性的に成熟する。アルプス地方ではマーモットの脂肪は胸と肺の病の良薬とされてきた。また、タルバガンの脂肪は皮革クリームとして優れる。マーモットのトンネル掘り活動は、土壌の通気性をよくするなど生態系維持のうえで重要な働きがあるが、農業や牧畜にはしばしば阻害要因として嫌われる。このため、マーモットは駆除の対象とされる。また、旧ソ連地域とアメリカでは肉と毛皮を目的に大量に狩猟されている。

[今泉吉晴]

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百科事典マイペディア 「マーモット」の意味・わかりやすい解説

マーモット

齧歯(げっし)目リス科の哺乳(ほにゅう)類の総称,あるいはそのうちの1種アルプスマーモットをさす。アルプスマーモットは体長50〜60cm,尾13〜16cmほど。背面は黒褐色〜赤褐色,腹面は淡褐色。アルプスとカルパティア山脈などに分布。夏は高山に1〜2匹でトンネルを掘ってすみ,草などを食べる。昼行性。冬は亜高山に下って数匹で深い穴を掘り冬眠。冬眠は半年以上に及ぶが食物はたくわえない。危険を感じると鋭い叫び声を出す。1腹2〜7子。近縁種にタルバガン(ボバック),ラッドチャックがある。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マーモット」の意味・わかりやすい解説

マーモット
Marmota; marmot

齧歯目リス科マーモット属に属する動物の総称。約8種から成る。体長 30~60cm,尾長 10~25cm。四肢は短く,体色は黄褐色ないし赤褐色,あるいは灰色など変化に富む。昼行性で,夜は土中や岩石の間につくった巣にひそむ。秋季に脂肪を十分たくわえ,冬になると冬眠する。実験動物として使われているモルモット (テンジクネズミ ) とは別のものである。北アメリカ,ヨーロッパ,アジアに分布する。

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世界大百科事典(旧版)内のマーモットの言及

【リス(栗鼠)】より

…オーストラリア,ニュージーランド,マダガスカル,南アメリカ南部,南極を除く世界中に広く分布し,およそ50属250種があり,昼行性のリス亜科Sciurinaeと夜行性のムササビ亜科Petauristinaeに大別される。最小のものは中央アフリカのアフリカコリス(アフリカコビトリス)Myosciurus pumilio(英名African pygmy squirrel)で,体長6~7.5cm,尾長5~6cm,体重16.5gほどであり,最大は北半球に分布するマーモットMarmota(英名marmot)類で,体長60cm,尾長25cm,体重7.5kgに達するものがある。また,樹上生のリス類中最大のものはインドオオリスRatufa(英名giant squirrel)類で,体長46cm,尾もほぼ同長で,体重は3kgに達する。…

【ウッドチャック】より

…【今泉 吉晴】。。…

【リス(栗鼠)】より

…オーストラリア,ニュージーランド,マダガスカル,南アメリカ南部,南極を除く世界中に広く分布し,およそ50属250種があり,昼行性のリス亜科Sciurinaeと夜行性のムササビ亜科Petauristinaeに大別される。最小のものは中央アフリカのアフリカコリス(アフリカコビトリス)Myosciurus pumilio(英名African pygmy squirrel)で,体長6~7.5cm,尾長5~6cm,体重16.5gほどであり,最大は北半球に分布するマーモットMarmota(英名marmot)類で,体長60cm,尾長25cm,体重7.5kgに達するものがある。また,樹上生のリス類中最大のものはインドオオリスRatufa(英名giant squirrel)類で,体長46cm,尾もほぼ同長で,体重は3kgに達する。…

※「マーモット」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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