マンリーケ(英語表記)Jorge Manrique

改訂新版 世界大百科事典 「マンリーケ」の意味・わかりやすい解説

マンリーケ
Jorge Manrique
生没年:1440-79

スペイン詩人。サンチアゴ騎士団長を父にもつ名門軍人王位継承内乱においてカトリック女王のイサベル1世のために戦い,英雄的な死を遂げた。父ドン・ロドリゴの死を歌った,ほぼ40連から成るただ1編の詩《父の死によせる歌Coplas por la muerte de su padre》(1476)で文学史上確固たる地位を占めているが,この詩は現世的なもののはかなさ,永遠の生の希求という古典的テーマに抒情的で完璧な表現を与えた絶唱で,世界文学における悲歌傑作として,ミルトンの《リシダス》やテニソンの《イン・メモリアム》と並び称されている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「マンリーケ」の意味・わかりやすい解説

マンリーケ
まんりーけ
Jorge Manrique
(1440―1479)

スペインの詩人。パレンシア県のパレーデス・デ・ナバで有力貴族の家に生まれ、軍人としても活躍し、若くして戦死。恋愛詩を中心に約50編の詩を残したが、これにはあまりみるべきものがなく、ほかに風刺詩と道徳詩とがある。代表作は長編道徳詩『父の死を悼(いた)む歌』(1476)。かつて武将として活躍、老衰で息を引き取る父親ロドリーゴを悼み、現世のはかなさを歌い上げ、死にゆく者の誉れを称揚する。名誉こそ死者生涯への報いとするいわゆるルネサンス的思考を流麗な詩句でつづる。詩人ロングフェローの名訳がある。

[清水憲男]

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世界大百科事典(旧版)内のマンリーケの言及

【スペイン文学】より

…また賢王の甥にあたる貴公子ドン・フアン・マヌエルの《ルカノール伯爵》は,ボッカッチョの《デカメロン》とともに後のヨーロッパ文学に多くの素材を提供した作品であるが,何よりもドン・フアン・マヌエルは審美的効果を意識して独自の文体を確立した最初の作家として重要である。
【15世紀――ルネサンスに向けて】
 15世紀の後半にはイタリア・ルネサンスの影響が見られるようになり,宮廷詩人のサンティリャナ侯爵Marqués de Santillana,つまりイニゴ・ロペス・デ・メンドサIñigo López de Mendoza(1398‐1458)やホルヘ・マンリーケによって繊細な抒情詩が書かれたが,なかでも後者の《父の死によせる歌》は世界文学における悲歌の傑作として,ミルトンの《リシダス》やテニソンの《イン・メモリアム》と並び称されている。また8音節の詩行からなり偶数行のみが脚韻をふむスペイン独特の詩様式,〈ロマンセ〉が生まれたのもこの時期である。…

※「マンリーケ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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