マルセル(Étienne Marcel)(読み)まるせる(英語表記)Étienne Marcel

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

マルセル(Étienne Marcel)
まるせる
Étienne Marcel
(1315?―1358)

パリの富裕な毛織物商人。プレボ・デ・マルシャン(市長)にもなった。百年戦争が勃発(ぼっぱつ)してフランスの政治、社会の危機が深まるなか、この局面を打開するために開かれた1355~57年の全国三部会で、第三身分の指導者としてきわめて重要な役割を果たした。イギリスに捕虜となった国王ジャン2世にかわって国政をつかさどる王太子シャルル(後の5世)に激しく抵抗して、近代的、議会主義的性格を有する国制改革の断行を求め、「大勅令」(グランド・オルドナンス)を発布させることに成功した。しかし、58年シャルルが「大勅令」の尊重を拒否したので、マルセルはパリ市に暴動を起こしたが、パリ市民によって見離され、同年7月末日、混乱に乗じて王位をねらうナバール王シャルルを同盟者としてパリ市に入城せしめようとしたとき、王党派のジャン・マイヤールの手にかかって落命した。14世紀パリ民衆革命の挫折(ざせつ)した事件として名高い。

[志垣嘉夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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