マテリアルインフォマティクス(読み)まてりあるいんふぉまてぃくす

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

マテリアルインフォマティクス
まてりあるいんふぉまてぃくす

IT(情報技術)によって産業用新材料の探索を効率化すること。リチウムイオン電池セパレーター液晶ディスプレー偏光フィルターなどのいわゆる機能性材料とよばれる材料は、日本がきわめて強い国際的競争力をもつ産業領域である。このような新材料の探索は、いままで経験豊富な研究者やエンジニアの手によって行われてきた。この新材料の探索を、ITの力を借りて効率化しようというものである。

 物質性質は、その分子構造からある程度推定することができる。これは第1原理計算とよばれ、シュレーディンガー方程式など物理学の基本的な方程式に基づいて、分子ふるまいをシミュレーションすることによって行う。これは、ある分子構造を仮定したときに、その性質を求める前向き計算であるが、本当に欲しいのは、ある特定の性質(たとえばリチウムイオンはよく通すが絶縁率が高い)をもつ分子構造を求める、後向き計算である。ここに、統計的機械学習の技術が適用できる可能性がある。すなわち、多くの知られている物質について、その分子構造と性質の関連を訓練データセットとすれば、ある別の性質をもつ新しい分子構造の候補をみつけることができると期待されるのである。

丸山 宏 2019年4月16日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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