マッチ(英語表記)match

翻訳|match

精選版 日本国語大辞典 「マッチ」の意味・読み・例文・類語

マッチ

〘名〙 (match)
① 試合。競技。
※筆まかせ(1884‐92)〈正岡子規〉二「此日余は上級生ベースボールの相手(マッチ)をなす筈にてありしが」
② 競争相手。敵手。
※黴(1911)〈徳田秋声〉七五「男が真の意味に於て自分のマッチでないこと」
③ (━する) つりあうこと。調和すること。似合うこと。また、似合の相手。
※星座(1922)〈有島武郎〉「あれは高根の花です。〈略〉僕なんざあ迚もおぬいさんのマッチではない」

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デジタル大辞泉 「マッチ」の意味・読み・例文・類語

マッチ(match)

[名](スル)
試合。勝負。競技。「タイトルマッチ」「リターンマッチ
調和がとれること。適合すること。「内容にマッチした外観」
[類語](1試合ゲーム予選メーンイベント公式戦/(2調和釣り合う見合う似合うそぐう即する相応対応相当応分分相応適合合致即応ぴったり適う適する合う沿う当てはまる当を得る値する兼ね合い均衡平衡バランスもってこい便宜好都合便利利便タイムリー有り難いうれしいおんの字重宝ちょうほう有用有益簡便軽便至便程よい絶好願ったり叶ったり願ってもない渡りに船格好頃合ころああつらえ向き打って付け好個好適適える向く似つかわしいふさわしいしっくり適当する同調するフィットするしか肌が合う適格適材くみし易いしかるべき究竟くっきょう合い口合目的文句無しリーズナブル好条件匹敵言い得て妙あたかもよし三拍子そろ似合わしいジャストミート思いがけない馬が合う息が合う順当どんぴしゃり所を得る最適つぼにはまる水を得たうおのよう結構尽くめ

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改訂新版 世界大百科事典 「マッチ」の意味・わかりやすい解説

マッチ
match

燐寸と書く。軸木につけた頭薬を摩擦することによって発火する用具。種類は軸木の材質容器の形状から,通常のマッチ箱に入った木軸のマッチ(家庭用並型・徳用型(家庭小型)マッチ,タバコ用マッチ,広告用マッチ),紙軸のブックマッチ(おもに広告用マッチ),パラフィンを浸透させた紙を巻き固めた蠟軸マッチ,長軸マッチ,耐水耐風マッチ等がある。以上が現在海外および日本で製造されているマッチのほとんどであり,頭薬を側薬の赤リン面に摩擦させて発火するマッチを総称して安全マッチという。このほかに頭薬を靴底や板壁などにこするだけで発火する摩擦マッチがある。摩擦マッチは頭薬中の薬剤の種類により,黄リンマッチ,赤リンマッチ,無リンマッチ,硫化リンマッチがある。黄リンマッチは,その毒性と自然発火の危険性から1912年世界的に製造禁止になっている。赤リンマッチ,無リンマッチも現在では製造されず,無害の三硫化リンを使用する硫化リンマッチだけがわずかに製造されている。

(1)箱マッチ 並型,家庭小型(徳用型),平型(寸二型),大平型(寸六型)等がある。板紙製の側箱と引出しから成り,中に頭付軸木が入っている家庭小型の場合は,身箱にふたをかぶせ,のり付けする。(2)ブックマッチ 櫛状の板紙の先端に頭薬がある紙軸が,板紙の折りたたまれたケースの中に針金どめしてある。(3)長軸マッチ(ファイアプレースマッチ) 通常の軸木は5cm前後であるが,これは10~28cmの長さがある。(4)耐水耐風マッチ 側箱にマツの木素地を用い,側薬,引出し,頭薬にラミネートなどで防水加工を施してある。さらに防風対策としては,軸木半分くらいの長さまで頭薬を付け燃焼時間を長くしてある。

(1)軸木の製造 軸木用材であるヤマナラシドロノキサワグルミなどの原木を長さ約42cmに切断し,軸木の太さと同じ厚さにベニヤ状にむき,同じ太さに刻み,2.2mm角,長さ5cmの軸木を作る。軸木が燃える際燃えかすが落ちないように軸木を炭化させるため,リン酸アンモニアを浸透させるインプル加工を施すことがある(輸出用は原則としてインプル軸木を用いる)。これを乾燥させて軸木とする。(2)頭薬混和 酸化剤である塩素酸カリウムに可燃剤を加え,にかわで混和し,泥状の薬泥を作る。この薬泥に染料,顔料等を加えることによって頭薬を自由に着色できる。(3)頭付軸木 この工程は,そろえた軸木と薬泥を連続自動マッチ製造機に供給することによってできる。すなわち軸木はコンベヤ式プレートに自動的に立て並べられ,パラフィン浸透(炎が頭薬から軸木に燃え移りやすくするため,溶融されたパラフィンを約12mm浸透させる),頭薬浸点,乾燥し,頭付軸木となる。(4)製箱 商標や広告店名が印刷されている原紙を1箱の大きさに裁断し,製箱機で引出しも装入され,マッチ箱となる。(5)側薬混和 発火剤である赤リンに助剤として硫化アンチモンを加え膠着(こうちやく)剤で混和する。(6)箱詰仕上げ 頭付軸木とマッチ箱を箱詰機に装てんし決められた本数の箱詰めがなされる。次に側薬が自動的に回転するブラシで塗布されヒーターで乾燥し,内包装,中包装,外包装をして出荷できる製品となる。なお,安全マッチの品質についてはJISに安全性,機能性,不良率等が定められている。

1827年イギリスの薬剤師J.ウォーカーが塩素酸カリウム,三硫化アンチモン,デンプン,アラビアゴムを頭薬とする摩擦マッチを作り,ヨーロッパの各地で製造されたが火付きはよくなかった。31年フランスのソーリアCharles Sauriaは黄リンを頭薬とするマッチを作り,またたくまにヨーロッパ中に広まった。45年オーストリアのシュレッターAnton Ritter von Kristelli Schrötterによって初めて赤リンが得られ,スウェーデンのパッシュGustaf Pasch,フランクフルトのボットガーB.Bottgerらが側薬に赤リンを使い,発火部を頭薬と側薬に分離した安全マッチが出現した。日本では,フランスに留学した清水誠が75年東京で黄リンマッチを製造したのに始まる。その後,立地条件のよい阪神地区を中心に,低賃金婦女子労働に依存し一大輸出産業となり,中国,インド市場を制覇した。大正初年には生産量の80%(日本の総輸出額の2.5%)が輸出され,スウェーデン,アメリカと並び世界の三大マッチ生産国となった。しかし第1次大戦ころから仕向地でマッチ工業が興り輸出は激減した。国内向け生産量も広告マッチの需要により,1965年以降一時的に増大したが,安価な使い捨てライターの出現により75年以降激減し,95年には事業所数15,年間出荷額は42億円程度のきわめて小さい産業になっている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マッチ」の意味・わかりやすい解説

マッチ
match

細長い木片や厚紙などの可燃物質の先端に,摩擦で発火する物質をつけた発火用具。発火する頭薬,火が燃え移りやすい引火性の物質,軸木からなる。現代のマッチには,(1) どこにこすりつけても発火する摩擦マッチと,(2) 安全マッチがある。摩擦マッチの頭薬には,摩擦熱で発火するのに必要な化学物質がすべて含まれている。安全マッチの頭薬は摩擦マッチよりはるかに高温でなければ発火せず,また発火させるための側薬とこすり合わせる必要がある。マッチを発火させる物質としてよく用いられるのが,リン化合物である。摩擦マッチの頭薬と安全マッチの側薬に,この物質が含まれている。
1805年,パリでジャン・シャンセルが,塩素酸カリウムと砂糖とゴムを先端につけた木片を硫酸に浸すと発火することを発見した。 1828年にロンドンのサミュエル・ジョーンズが特許を取得した「プロメテウス・マッチ」は,酸を入れたガラス球の外側を発火性の合成物で覆ったもので,ガラス球をつぶすと包み紙に火がつく仕組みだった。初期のマッチはなかなか発火せず,たびたび大量の火花を噴き上げ,さらにきわめて不快な臭いを発した。摩擦マッチを最初に発明したのは,イギリスの化学者ジョン・ウォーカーだった。薬剤師でもあったウォーカーの帳簿には,1827年4月7日付で摩擦マッチの最初の売り上げが記録されている。ウォーカーの摩擦マッチ「フリクション・ライツ」は先端部に塩化カリウム硫化アンチモンを塗布したもので,二つ折りにした紙やすりに挟んでこすると発火した。ウォーカーはこの商品の特許を取得しなかった。 1831年に黄リン (白リン) を加えた製法が開発されると,この画期的製法はたちまち広まった。 1835年には,塩化カリウムの代わりに酸化鉛を用い,静かに発火するマッチが実現した。 1845年,オーストリアの化学者アントン・フォン・シュロッターが,自然発火せず毒性のない赤リンを発見,これにより,発火物質を頭薬と側薬に分けた安全マッチが開発された。この手法の特許は,1855年にスウェーデンの J.E.ルンドストレームが取得している。安全マッチが広く受け入れられる一方,黄リンマッチの需要も続いていたが,19世紀末,黄リンマッチ工場の作業員に重篤な中毒が認められ,20世紀に入ると黄リンはほとんどの地域で禁止された。現代の安全マッチの多くは,頭薬に硫化アンチモンと,塩化カリウムなどの酸化物質,そして硫黄または木炭を使用し,側薬に赤リンを使用している。安全マッチ以外のマッチは通常,頭薬に黄リンよりはるかに毒性の低い硫化リンを使用している。

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百科事典マイペディア 「マッチ」の意味・わかりやすい解説

マッチ

漢字では燐寸。摩擦によって発火し,火をつけるのに用いられる火工品。軸木に発火性の薬剤をつけ,どこで摩擦しても発火する摩擦マッチと,発火性薬剤を軸木と箱側とに分けてつけ,両者の摩擦によって発火する安全マッチとがある。摩擦マッチとしては硫化リンマッチがまれに用いられ,黄リンマッチは毒性と発火危険性があるため製造が禁止されている。現在日本で製造されるマッチの大半は安全マッチで,塩素酸カリウムを主体に,松脂(まつやに),ガラス粉,ケイ藻土などの混合物を膠(にかわ)液で練って軸頭につけ,箱側には赤リンと硫化アンチモンの混合物を膠液と練って塗る。軸木には着火剤としてパラフィンをしみ込ませ,燃えかすが落ちないようにリン酸アンモニウム処理を施してあるのがふつう。 マッチがいつごろから使われだしたかははっきりしないが,19世紀前半にはヨーロッパで工業的生産が始まっている。日本では1875年に東京で黄リンマッチが製造されたのが最初とされる。

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デジタル大辞泉プラス 「マッチ」の解説

マッチ

大塚食品株式会社が販売する炭酸飲料。

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世界大百科事典(旧版)内のマッチの言及

【ウォーカー】より

…初め外科医を志したが,手術を嫌って薬剤業に転向。1827年ころに最初の実用的な摩擦マッチを発明したことで知られている。その材料の正確な組成は不明だが,塩素酸カリウム,硫化アンチモンの混合物を木片の端に塗布乾固してつくった。…

※「マッチ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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