マクルーハン(英語表記)McLuhan, Marshall

精選版 日本国語大辞典 「マクルーハン」の意味・読み・例文・類語

マクルーハン

(Marshall McLuhan マーシャル━) カナダ英文学者、文明評論家。メディアの、印刷物からテレビコンピュータなど電子工学的媒体への移行と、それによる人間感覚社会への影響などを論じた。著「メディアの理解」「グーテンベルグの銀河系」など。(一九一一‐八〇

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「マクルーハン」の意味・読み・例文・類語

マクルーハン(Marshall McLuhan)

[1911~1980]カナダの英文学者・文明批評家。メディアの印刷物からテレビ・コンピューターなど電子工学的媒体への移行と、それによる人間の感覚や社会への影響などを論じた。著「メディアの理解」など。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マクルーハン」の意味・わかりやすい解説

マクルーハン
McLuhan, Marshall

[生]1911.7.21. エドモントン
[没]1980.12.31. トロント
カナダの文明批評家。フルネーム Herbert Marshall McLuhan。ユニークなメディア論を提唱したことで知られる。マニトバ大学卒業後,イギリスケンブリッジ大学留学し英文学を専攻。1946年トロント大学教授となり,1951年最初のメディア論『機械の花嫁』The Mechanical Bride: Folklore of Industrial Manを発表,メディアと人との関係・影響を独自の視点で展開,世界的に注目されるようになった。テレビ,ラジオ,印刷物などのメディアを通じたコミュニケーションを,人に向けたメッセージの伝達,あるいは身体・感覚の延長ととらえ,「メディアはメッセージである」"the medium is the message"などのユニークな文体でメディアの特徴を表現した。また,電子メディアの登場で,地球規模のコミュニケーションが成立し,世界があたかもひとつの小さな「村」であるかのようにみる「地球村(グローバルビレッジ)」という概念を推進した。こうしたメディア論はインターネット時代においても有効であるが,必ずしも楽観的というわけではない。著書に『グーテンベルクの銀河系』The Gutenberg Galaxy: The Making of Typographic Man(1962),『メディア論』Understanding Media: The Extensions of Man(1964)。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「マクルーハン」の意味・わかりやすい解説

マクルーハン
Marshall McLuhan
生没年:1911-80

カナダの英文学者,文明批評家。1934年マニトバ大学卒業後,イギリスのケンブリッジ大学に留学。初期には英文学者としての研究に活動領域を限定していたが,50年代以降,広くメディア論を展開,メディアを中心とした独自の文明論で一時期,日本を含め世界的に有名になった。マクルーハンは人間の感覚機能の外部的拡張を可能にするすべての人工物をメディアととらえ,いまや人間の中枢神経組織までがコンピューターというメディアによって拡大・強化されると論じた(《メディアの理解》1964)。しかし,一般的人気はなによりも印刷物中心の時代とは異なるテレビ中心のメディア環境における新しい人間像の成立を唱えた点に集中したといえる。

 現代は新しいメディアが続々と登場しようとしているが,メディアの総合的把握と,それらによる人間の感覚機能の変容に関し,マクルーハンの再評価が一部にみられる。あだ花的なブームの対象であったマクルーハンが本格的なメディア論の中に位置づけられるかどうかは,これからのことである。ほかに,シェークスピア論などを含む《グーテンベルグの銀河系》(1962)などの著作がある。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

図書館情報学用語辞典 第5版 「マクルーハン」の解説

マクルーハン

1911-1980.カナダ出身の英文学者,文明批評家.トロント大学教授.主著に『グーテンベルクの銀河系』(The Gutenberg Galaxy1963),『メディア論』(Understanding Media1964)など.英文学研究者としてキャリアをスタートさせたが,1960年代以降のメディアや文明についての批評で大きな注目を集め,メディア論と呼ばれる領域を切り開いた.「メディアはメッセージである」「グローバル・ヴィレッジ」「ホットなメディア/クールなメディア」などの警句を通じ,メディアそれ自体が内容を規定するという主張を行い,印刷メディアから電気メディアへの移行が社会に与える影響について予言的な発言で注目を集めた.マクルーハンの議論はその見解の斬新性が高く評価される一方で,実証性に欠ける,あるいは技術決定論であるという批判もなされ,研究者の間でその評価について賛否が分かれた.

出典 図書館情報学用語辞典 第4版図書館情報学用語辞典 第5版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「マクルーハン」の意味・わかりやすい解説

マクルーハン
まくるーはん
Herbert Marshall McLuhan
(1911―1980)

カナダの英文学者、文明批評家。マニトバ大学卒業後、イギリスに留学。もともと正統的なイギリス中世、ルネサンス文学の学者であったが、主として1960年代以降、メディアの問題を中心とした文明論を展開、やがて広範な領域をメディアの観点から論ずるユニークな文明批評家として世界的に有名になった。マクルーハンは、人間の身に備わった機能を強化し拡大する働きをするものをすべてメディアとしてとらえた。ことに1960年代に著しい普及をみせたテレビをメディアとして高く評価し、活字メディアの制約のもとにあった人間がテレビによって全感覚的理解を取り戻したと主張した。メディアによる社会の変容を意識し、世界全体に共通した価値観や意識が広まることを予言した。それはテレビの影響にとどまらず、インターネットなどによる通信ネットワーク社会にも通じる考え方といえる。一般の考え方とは異なり、メディアの内容よりは形式、メディア特性を決定的なものとしてとらえたところから賛否が激しく対立した。メディアを広い観点からとらえ直したメディア文明論としてマクルーハンの考え方は今日でも重要視されている。

[後藤和彦]

『M・マクルーハン、E・カーペンター編著、大前正臣・後藤和彦訳『マクルーハン理論 メディアの理解』(1981・サイマル出版会)』『M・マクルーハン著、森常治訳『グーテンベルクの銀河系』(1986・みすず書房)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「マクルーハン」の意味・わかりやすい解説

マクルーハン

カナダの英文学者,文明批評家。マニトバ大,ケンブリッジ大卒。トロント大教授。メディア論を中心とした文明論で一時期世界的に有名になった。人間の感覚をも含めて拡大・強化される新しいメディア像を描いた。コンピューターによるネットワーク化の進む今日において再評価の動きも一部にある。主著《グーテンベルグの銀河系》(1962年),《メディアの理解》(1964年。邦題《人間拡張の原理》)。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内のマクルーハンの言及

【インターネット】より

…このほか,全世界のコンピューターが,国境という社会・経済制度と独立した分散管理のインターネットでつながったことは,国際社会の成立ちにすら影響を与えはじめている。通信【竹内 郁雄】
【インターネットとグローバリゼーション】
 かつてM.マクルーハンは,電子的なメディアが地球全体を覆うようになったときには,地球全体が〈村〉のような単一の共同体に統合されるだろう,と予想していた。彼は,その共同体をグローバル・ビレッジと名付けたのだ。…

※「マクルーハン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

青天の霹靂

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...

青天の霹靂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android