ポープル(読み)ぽーぷる(英語表記)John A. Pople

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ポープル」の意味・わかりやすい解説

ポープル
ぽーぷる
John A. Pople
(1925―2004)

イギリス理論化学者。紳士服店の息子として生まれる。ケンブリッジ大学数学を専攻して卒業。数学の理論を使って科学の他の分野を研究したいと考え、理論化学の道へ入る。1951年にケンブリッジ大学で液体特性を研究して博士号を取得。トリニティー大学で3年間研究員として過ごし、1954年講師の職を得る。1955年末、核磁気共鳴NMR)に興味をもち、カナダの国立研究所で2年にわたってNMRの理論背景を研究する。1958年、ロンドン近郊にある国立物理研究所の基礎物理分野に研究の場を移す。さらに1964年より研究の拠点をアメリカに移し、ピッツバーグのメロン工科大学(現、カーネギー・メロン大学)教授となる(~1993)。このころ高速のコンピュータが出始め、モデル化学が盛んになっていくことが考えられたが、直面している課題として実践的な計算プログラムを研究し、確立にいたった。このときの功績により、1998年にW・コーンとともにノーベル化学賞を受賞した。1986年より1993年までノースウェスタン大学教授を務めた。

[馬場錬成]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ポープル」の意味・わかりやすい解説

ポープル
Pople, Sir John Anthony

[生]1925.10.31. イギリス,バーナムオンシー
[没]2004.3.15. アメリカ,イリノイ,シカゴ
イギリスの数理化学者。 1951年ケンブリッジ大学で博士号を取得。 1964年アメリカ,ピッツバーグのカーネギー・メロン大学教授,1986年からはノースウェスタン大学教授。量子力学に基づいた計算的手法を分子化学の分野に導入し,分子の性質や化学反応をコンピュータを使って計算・解析する方法を開発した。 1970年コンピュータ・プログラム「ガウシアン」を完成,世界中の研究所で使われた。 1990年代初頭には,同様に分子化学に量子力学的手法を用いる研究をしていたウォルター・コーンの密度汎関数理論を組み込んだコンピュータ・プログラムを商品化した。これらのプログラムにより実験をせずに分子構造を知ることができるほか,実在しない分子を設計することもできるようになった。 1998年コーンとともにノーベル化学賞を受賞。

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化学辞典 第2版 「ポープル」の解説

ポープル
ポープル
Pople, John A.

イギリス生まれのアメリカの量子化学者.ケンブリッジ大学で数学を学び,1948年講師となるが,その間にJ. Lennard-Jonesのもとで理論化学の研究をはじめ,液体論で学位を取得した後に,共役系の電子状態理論や核磁気共鳴の理論で成果を上げた.1964年アメリカのカーネギー工科大学(現カーネギーメロン大学)教授,1993年からノースウェスタン大学教授となる.1960年代に全価電子の半経験的分子軌道法を開発し,1970年にはガウス型原子基底関数を用いた非経験的分子軌道計算プログラムGaussian70を発表し,分子軌道計算が実験化学者にも有用なツールとして普及する先駆けとなった.量子化学における計算法の開発により,1998年ノーベル化学賞を受賞した.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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