ポリス(ロック・バンド)(読み)ぽりす(英語表記)Police

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ポリス(ロック・バンド)
ぽりす
Police

ニュー・ウェーブを代表するイギリスロック・バンド。メンバーはスティングSting(1951― 、本名ゴードン・マシュー・サムナーGordon Matthew Sumner、ボーカル、ベース)、アンディ・サマーズAndy Summers(1942― 、ギター)、スチュアート・コープランドStewart Copeland(1952― 、ドラム)。ニュー・ウェーブ・シーンから出現した彼らだったが、スティングの優れた楽曲とバンドの卓越した演奏技術は、プロフェッショナルなミュージシャンシップに裏打ちされており、幾多のニュー・ウェーブ・グループとは異質の存在であった。

 1978年にA&Mより『アウトランドス・ダムール』でデビュー、続いて『白いレガッタ』(1979)、『ゼニヤッタ・モンダッタ』(1980)と順調にリリースされた彼らの作品は、レゲエリズムを巧みに取り入れた楽曲を緊張感に満ちたバンド・アンサンブルによって提示するものであった。その高い音楽性によって、ポリスはニュー・ウェーブの枠を超えて広く注目を集める。続く『ゴースト・イン・ザ・マシーン』(1981)は世界中でヒット、ラスト・アルバムとなった『シンクロニシティー』(1983)は大ヒット曲「見つめていたい」を含み、ポリスを代表する作品となった。

 スティングによるポップな楽曲とレゲエ風のベース・ライン、サマーズのエレガントなギター・サウンド、そしてコープランドによる簡潔で的確なドラミングの取り合わせは「完璧なバンド・アンサンブル」とされ、イギリスのニュー・ウェーブ・シーンを代表するグループとの評価を得た。その時期のポップ・ミュージックのプロモーションにおいて大きな役割を果たしたアメリカの音楽専門チャンネルMTVの役割も大きかった。正確な演奏技巧とメンバーのフォトジェニックなルックスは、ビートルズの伝統を継承する正統的なロック・グループのイメージを強め、世界的な人気につながった。

 1986年に解散し、メンバーは各々ソロ活動に入った。バンドの中心人物であったスティングはソロ転向後、ワールド・ミュージックの音楽家やジャズ・ミュージシャンたちとの交流を深め、『ブルー・タートルの夢』(1985)、『ナッシング・ライク・ザ・サン』(1987)、『ソウル・ケージ』(1991)などのアルバムを発表する。その後『テン・サマナーズ・テイルズ』(1993)でグラミー賞の最優秀男性ポップ・ボーカル賞を受賞。1990年代以降もAOR(アダルト・オリエンテッド・ロック)の代表的なミュージシャンとして活動する。またスティングは、1984年のエチオピア難民救済のチャリティーコンサート「ライブ・エイド」に出演して以来、ブラジル熱帯雨林保護やアムネスティ・インターナショナルのためのキャンペーンに参加するなど、社会問題への関心も強い。

 ポリス解散後のサマーズは『XYZ』(1987)を皮切りに『ミステリアス・バリケーズ』(1988)、『ザ・ゴールデン・ワイヤー』(1989)などを発表、フュージョン色の強い音楽を聞かせる。コープランドのソロ作品には『アニマル・ロジック』(1989)等がある。

[増田 聡]

『ウェンズリー・クラークソン著、平田良子訳『スティング――孤独のメッセージ』(1996・リットーミュージック)』『クリス・ウェルチ著、丸山京子訳『ザ・ポリス/スティング全曲解説』(1996・バーン・コーポレーション)』

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