精選版 日本国語大辞典 「ボールト」の意味・読み・例文・類語
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翻訳|vault
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曲面の天井または屋根。穹窿(きゆうりゆう)ともいう。本来は土,煉瓦,石,コンクリートなどで造ったものをいうが,木,布,ガラス,合成樹脂,金属などの軽い材料で造ったものも一般にボールトと呼ぶ。その基本的なものはトンネル・ボールト(バレル・ボールトbarrel vault)とドーム(円蓋(えんがい))で,前者はエジプトに紀元前1200年ごろのものがある。後者はそれよりも古くから知られ,またイグルー(エスキモーの雪の家),中近東や中央アフリカの農民住宅などにも見られる。煉瓦,石,コンクリートのボールトが,大きな荷重を支持でき,大規模な屋根や天井を造るのに適しており,また変化にとむ空間を造りあげるという特色を活用したのは,古代ローマである。ローマ人は2本のトンネル・ボールトを直角に組み合わせた交差ボールトcross vaultや角(かく)ドームcloister vaultなど各種のボールトを使用した。古代ペルシアの伝統を発展させた中東のイスラム諸国では,鍾乳石のような装飾をもつ美しいボールトやネギ坊主形の幻想的なドームを考案した。西欧ではとくに防火上の理由で,木造の天井に代わって11世紀後半から聖堂で石造のボールトを用いるようになった。ロマネスク建築では各種のボールトを造ったが,ゴシックではボールトの表面に突出したアーチをつけたリブ・ボールトrib vaultを使用し,中世末期のドイツ,とくにイギリスできわめて美しいボールト(ファン・ボールトfan vaultなど)を造りあげた。近世以降はリブのないボールトを再び用いたが,これらは石や煉瓦造なので,建設に長い工期と多額の費用を必要とした。19世紀後半以降は従来より軽くて大きなボールトを,鉄とガラスで経済的に造れるようになった。
執筆者:飯田 喜四郎
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…また,二階床・三階床も通例木造であった。しかし,アーチの原理を応用して,石や煉瓦やコンクリートで曲面天井(ボールト)をつくる方法も古代から発達し,建物の本体を不燃化することが可能になった。曲面天井の一例であるドーム建築では,直径43mまでの実例がある。…
…
[教会堂建築の新様式]
ゴシック美術の様式はまず建築,ことに教会堂建築によって実現されたが,これと協和して形成された彫刻,絵画,工芸に対しても,総括的にこの様式の名称が適用される。ゴシック教会堂建築の特徴としては,一般に構造技術上の3要素,すなわちリブ・ボールトribbed vault,尖頭アーチpointed arch,フライイング・バットレスflying buttress(飛控え)があげられ,その組織的適用によって,仰高性のいちじるしい建築様式が成立しているとされる(ゴシック建築のうちには,木造天井を架して,しかも仰高性をあらわしている例もあるが,様式形成の主導力となったのは石造ボールト建築である)。この3要素はすでにロマネスク建築にもあった。…
…ギリシア建築の天井はあまりよく知られていないが,神殿の入口部分には大理石板を用いた格天井が使われていた。ローマ建築では,天然コンクリートを用いた巨大なボールトが用いられ,その表面は格天井のような浮彫で飾られていた。ポンペイの浴場に見られるように,こうした天井はきわめて豪華に装飾されていたと考えられる。…
…天井に施された絵画をいう。ここで天井というのは,木造建築に多い平天井のほか,石材や煉瓦などを用いるボールト(穹窿),円蓋,半円蓋など,要するに建築空間の上部を覆う面をさす。 天井画については,そこに何が描かれるかという問題といかに描かれるかという問題がある。…
※「ボールト」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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