ボルドー液(読み)ボルドーえき

精選版 日本国語大辞典 「ボルドー液」の意味・読み・例文・類語

ボルドー‐えき【ボルドー液】

〘名〙 石灰乳硫酸銅液を加えた農業用殺菌剤。はじめ、一九世紀末期、フランスのボルドー地方で葡萄(ぶどう)の病害駆除に用いられたもの。
生活探求(1937‐38)〈島木健作〉二「水田だって〈略〉ボルドウ液を撒いたりしなきゃならん」

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デジタル大辞泉 「ボルドー液」の意味・読み・例文・類語

ボルドー‐えき【ボルドー液】

硫酸銅溶液生石灰の溶液とを混合した果樹・野菜の殺菌剤。19世紀末にボルドー地方でブドウに初めて使用。

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改訂新版 世界大百科事典 「ボルドー液」の意味・わかりやすい解説

ボルドー液 (ボルドーえき)

果樹や野菜などの病害の防除に用いられる殺菌剤。一般に硫酸銅自身は殺菌力を有することが知られていたが,単独で用いると植物に薬害を生ずる欠点がある。しかし,硫酸銅に石灰と水を加えて用いると,薬害が著しく減少し,殺菌剤として用いることができる。1885年,フランスのボルドー地方で発生したブドウのべと病(露菌病)に本剤が有効であることが,フランスの植物学者ミラルデP.M.A.Millardetによって見いだされ,その土地の名にちなんでボルドー液と命名された。以後,現在に至るまで広く用いられている殺菌剤である。

 硫酸銅と生石灰と水の混合比により,いろいろな処方のボルドー液が知られているが,その一般組成はCuSO4xCu(OH)2yCa(OH)2zH2Oで示される。この薬剤が有効な病害は,ミカンのそうか(瘡痂)病,かいよう(潰瘍)病,リンゴの黒点病赤星病,ナシの黒斑病,赤星病,黒星病,カキの炭疽(たんそ)病,落葉病,ブドウのべと病,晩腐病,黒痘病,各種野菜のべと病,炭疽病,疫病などである。哺乳動物に対する急性毒性は,50%致死量LD50=300mg/kg(ラット経口,硫酸銅として)である。ボルドー液と類似の薬効を有する殺菌剤として,塩基性硫酸銅(CuSO4・3Cu(OH)2),塩基性塩化銅(CuCl2・3Cu(OH)2),水酸化第二銅(Cu(OH)2)が知られている。ボルドー液は,植物病原菌エネルギー代謝をはじめ,生体において重要な生化学反応に重要な役割を果たしているSH酵素(スルフヒドリル酵素)を不活性化することによって殺菌力を発揮する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ボルドー液」の意味・わかりやすい解説

ボルドー液
ぼるどーえき
bordeaux mixture

硫酸銅と生石灰で自家調製する殺菌剤。多種類の病原菌に保護剤として有効であるが、治病的効果は期待できない。使用作物の種類によって硫酸銅と生石灰の使用量を変更するので、その組成の一般式はCuSO4・xCu(OH)2・yCa(OH)2・zH2Oで表される塩基性硫酸銅である。石灰乳の中へ硫酸銅水溶液を徐々に加えてアルカリ側で反応させないと、懸濁(けんだく)液の粒子が粗くなって殺菌効果を発揮しない。製法の巧拙により効力が変動する。1885年フランスのボルドー地方でブドウの盗難防止に硫酸銅と石灰の混合液を用いたところ、べと病の被害が少なくなったことから、ボルドー大学のミラルデPierre-Marie-Alexis Millardet(1838―1902)によって殺菌力が発見され、全世界に普及した。日本では1897年(明治30)茨城県牛久(うしく)のブドウ園で使われてから普及した。

[村田道雄]

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百科事典マイペディア 「ボルドー液」の意味・わかりやすい解説

ボルドー液【ボルドーえき】

農業用殺菌剤の一種。フランスのボルドー地方にちなむ。ふつう石灰乳に硫酸銅水溶液を加えてつくる石灰ボルドー液をさす。散布液1l当りの硫酸銅グラム数と生石灰グラム数により,4-4式,6-3式ボルドー液などと呼ぶ。古い歴史をもち,今なお黒星病,黒点病,べと病など果樹や野菜の各種病害防除に使われる。典型的な保護殺菌剤で,予防的に散布する。
→関連項目黒斑病殺菌剤べと病

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ボルドー液」の意味・わかりやすい解説

ボルドー液
ボルドーえき
Bordeaux mixture

無機銅剤。フランス,ボルドー大学のピエール=マリ=アレクシス・ミヤルデによって見出された農薬で,ぶどうの露菌病,野菜,果樹の保護殺菌剤として繁用される。硫酸銅と生石灰の溶液を別々につくり,石灰乳液中に硫酸銅溶液を注入してつくられる。日本では硫酸銅 120匁(450g)を基準とし,生石灰はその半量,等量,倍量を加えて水 4斗(72l)に薄めたものを用い,それぞれ 4斗式,6斗式,8斗式と呼んだ。メートル法では水 1l に溶解する硫酸銅と生石灰のグラム数を用いて「4-4式ボルドー」のように呼ぶ。4-4式は 4斗式の石灰等量ボルドーに相当する。

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化学辞典 第2版 「ボルドー液」の解説

ボルドー液
ボルドーエキ
Bordeaux mixture

硫酸銅水溶液を石灰乳によくかきまぜながら加えて調製された,古くから用いられている農薬.フランスのボルドー大学教授がブドウのため,硫酸銅と生石灰の混合液を散布したところ,産地で大発生していた,べと病の被害がなかったことをヒントに実験を行い,1885年に発表した.作物や病害の種類により調合割合が異なり,ボルドー液1 L 中に含まれる硫酸銅および生石灰の質量(g)でその調合割合を表す.たとえば,1 L に硫酸銅4 g,生石灰4 g を含むボルドー液を4-4式とよぶ.

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世界大百科事典(旧版)内のボルドー液の言及

【硫酸銅】より

…グリセリンに可溶。殺菌剤,ガラスの着色剤,材木の防腐に用いられ,石灰乳との混合物はボルドー液といい,ブドウのべと病予防に用いられる。これはCu2+のべと菌に対する強い殺菌力によるもので,このほかジャガイモ,トマト,バナナ等多くの作物に対し使用されている。…

※「ボルドー液」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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