ボネ(読み)ぼね(英語表記)Charles Bonnet

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ボネ」の意味・わかりやすい解説

ボネ
ぼね
Charles Bonnet
(1720―1793)

スイス生物学者、哲学者。初め法律学を修めたが、のちにレオミュールについて博物学を研究した。アリマキアブラムシ)の雌のみを飼育しても次世代が生じる(単為生殖)ことを発見し、前成説を主張し、とくに卵が重要であると述べた。しかしその後ヒドラなどの再生を研究して、これが前成説では説明しにくいことを認め、その前成説を修正した。また子が両親の形質を遺伝することについては、精液が栄養として卵に影響を与えると述べた。後年眼病のために実験を断念してもっぱら思索を行い、自然物が元素から人間に至る階段状の配列をとるという「自然の階段説」を唱えた。主著に『有機体についての考察』(1762)などがある。

[八杉貞雄]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ボネ」の意味・わかりやすい解説

ボネ
Bonnet, Charles

[生]1720.3.13. ジュネーブ
[没]1793.5.20. ジュネーブ
スイスの博物学者,法律家,哲学者。初め昆虫を研究対象として,1745年アリマキの単為生殖を実験によって証明し,ミミズカタツムリ,ヒドラの再生を観察し,またチョウ気門によって呼吸することを発見した。視力障害のためもあって,50年頃より植物の生理に関する研究に転じ,光合成,葉の上偏生長,樹液の移動などについて研究を行なった。失明してから理論の構築に専心。当時,前成説が支配的であり,アリマキの単為生殖の知見はそれを支持するものであった。しかし,再生現象をも説明する必要から,独特の発生理論を立てた。また,生物学の用語として初めて「進化」という言葉を使用した。ただし,種が変りうるものとは考えておらず,種の新生や消滅を天変地異によって説明している。主著『昆虫学』 Traité d'insectologie (2巻,1745) ,『有機体についての考察』 Considération sur les corps organisés (2巻,62) ,『哲学的新生説』 Palingénésie philosophique (69)。

ボネ
Bonnet, Georges Étienne

[生]1889.7.23. バシャック
[没]1973.6.18. パリ
フランスの政治家,外交官。 1924年政界に入り,12の内閣の閣僚をつとめ,うち蔵相を4回経験。 38年 E.ダラディエ内閣の外相当時,ミュンヘン協定を支持し,対独宥和主義の第一人者といわれた。 39年外相在任中,独ソ不可侵条約締結の報に接し「青天のへきれき」の有名な言葉を残した。第2次世界大戦中のビシー政府の国家評議員をつとめたこともあるが,56~58年下院議員となり 62年再選された。

ボネ
Bonnet, Louis Martin

[生]1767
[没]1793
フランスの版画家。ペテルブルグやロンドンで制作。銅版と石版で女性の顔,ビーナスなどを主題に,原画のもつ柔和な調子を銅版で仕上げる技法を発明した。

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改訂新版 世界大百科事典 「ボネ」の意味・わかりやすい解説

ボネ
Charles Bonnet
生没年:1720-93

スイスの生物学者。ジュネーブに生まれ,幼いころから,R.A.F.deレオミュールらの影響を受けて昆虫に興味を示したが,父の勧めもあり,法律を学ぶ。かたわら自然研究も続け,昆虫の研究でアリマキの単為生殖を発見し,またA.トランブレーの発見を受けて,ヒドラの再生実験を行った。1750年以降,目を悪くして昆虫の研究ができなくなり,植物生理学の研究に転じ,葉からの気体発生など光合成に関する研究を行った。生物の発生に関して前成説の立場をとったが,彼の説は,後成説側からの実験的批判も考慮された修正版前成説であり,広く支持を受けた。また〈自然の階段〉の思想を受け継いで発展させたことでも知られる。主著に《昆虫学研究》(1745),《生物体についての考察》(1762)などがある。
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367日誕生日大事典 「ボネ」の解説

ボネ

生年月日:1889年7月23日
フランスの政治家,外交官
1973年没

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世界大百科事典(旧版)内のボネの言及

【生物学】より

…顕微鏡による観察ではR.フックの《ミクログラフィア》(1665)があり,A.vanレーウェンフックの活動も17世紀後半であった。 18世紀になると,後生説をとなえたC.F.ウォルフ,多能の実験家であったL.スパランツァーニ,前生説論者でアリマキの単為生殖を見いだしたC.ボネなど,発生学の研究が目だつようになる。A.トランブレーがヒドラの再生実験を行って,動植物の区別について議論を引き起こしたのも,またリンネが種の固定不変を信じながら,現実にみる種の可変性に悩まされたのも,18世紀のただ中のことであった。…

【前成説】より

…18世紀になると精子を綿密に観察しても成体の原型が見いだされないことが確認され,精子は寄生微生物とみなされる。そしてC.ボネによってアリマキの単為生殖が発見されるにいたり(1745),精原説は完全に権威を失った。これと前後してA.トランブレーがヒドラの再生現象を実証した(1744)。…

※「ボネ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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