ボタン(服飾付属品)(読み)ぼたん(英語表記)botão ポルトガル語

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ボタン(服飾付属品)」の意味・わかりやすい解説

ボタン(服飾付属品)
ぼたん
botão ポルトガル語

衣服などの合せ目につけて留め具の役割をさせたり、装飾として使用する服飾付属品。ボタンホール(ボタン穴)やループ、切替え線などをくぐらせて留めるが、形は平板状、球状、棒状とさまざまである。糸通し穴を裏から表に突き通した「表穴ボタン」(二つ穴または四つ穴)と、糸穴を裏側につくり、表には見えなくした「裏穴ボタン」がある。特殊なものでは、ダッフルコートの浮きボタン、凹型と凸型のスナップ式のプレスボタン、打紐(うちひも)などでつくるチャイナボタン、布や皮をかぶせたくるみボタン、2個のボタンをつないで一対にした鼓(つづみ)ボタン、一方に留め具のついたカフスボタンなどがある。本来、実用的なものであるが、装飾性、象徴性が強く、ときには装飾目的のみに用いられることもある。

[平野裕子]

歴史

ボタンの一種はすでに先史時代からみられるが、ボタンホールを通して留める今日的なボタンの出現は、衣服が体に密着してくる13世紀以降である。それ以前は紐かブローチかピンで留め、15世紀には鉤(かぎ)ホックが用いられた。初期のボタンはブロンズ、骨、木などでつくられていたが、しだいに装飾化し、金銀宝石ビーズ象牙(ぞうげ)、布などを用いた精巧なものが登場した。とくにロココ時代の男子服では、地位を象徴するぜいたくな装飾品となり、さまざまに流行を反映した。細紐で一対にしたブランデンブルクス、直径4~5センチメートルもある大型のもの、細密画や肖像画の入った飾りボタンなどがある。婦人服にボタンが使用されたのは19世紀後期で、これは婦人がテーラードな服を着用し始めたことによる。19世紀初頭、アメリカでボタンの工業化が始まり、20世紀のプラスチックの出現に及んで、色、形も変化に富む、手近で不可欠な留め具となった。西洋式のボタンが日本で一般化したのは明治以降で、陸軍軍服から始まった。なお、日本ではポルトガル語を経てボタンと発音するが、英語ではブトンbutton、フランス語はブートンboutonである。

[平野裕子]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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