ボイル油(読み)ボイルゆ(英語表記)boiled oil

精選版 日本国語大辞典 「ボイル油」の意味・読み・例文・類語

ボイル‐ゆ【ボイル油】

〘名〙 (boiled oil から) 亜麻尼油や荏油(えのあぶら)などの乾性油に金属酸化物を混ぜて煮沸し、さらに乾性を増した油。ペンキ油絵の具などの溶剤に用いる。
神戸又新日報‐明治二〇年(1887)七月一五日「ターペンタイン及ボヲイル油」

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デジタル大辞泉 「ボイル油」の意味・読み・例文・類語

ボイル‐ゆ【ボイル油】

乾性油の亜麻仁油あまにゆ大豆油などに乾燥剤を加えて煮沸し、乾燥性を高めた油。ペイント・印刷インクなどに用いる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ボイル油」の意味・わかりやすい解説

ボイル油
ぼいるゆ
boiled oil

乾性油を加熱しながら空気を吹き込み、乾燥剤を添加して適当な粘度と乾燥性とをもつように酸化させたもの。塗料原料となる。乾性油を薄層にして大気中に放置すれば、乾燥に数日を要する。しかしこれを加工してボイル油にすれば、乾燥時間は数分の1に短縮される。原料油としてはあまに油を単独、あるいは大豆油(ゆ)などを他乾性油と混合して使用する。乾燥剤としては、鉛、コバルトマンガンなどの酸化物、脂肪酸塩あるいは樹脂酸塩を用いる。原料乾性油を徐々に加熱して130℃になし、油中の水分を除去する。ついで温度を100℃程度に設定し、0.1~0.2%のあまに油脂肪酸マンガンなどを添加し、空気を吹き込む。吹込み時間が短い場合には色調が悪く粘度は低く、長い場合には色調は淡くなるが粘度は適切でなくなる。一般に吹込み時間は10時間程度。不飽和度の高い脂肪酸を含む油ほど色調は悪いが、吹込み空気により酸化漂白され、原料油よりも色調は淡くなる。原料乾性油の酸化により、比重、粘度、酸価は上昇するが、ヨウ素価は低くなる。濾過(ろか)してボイル油製品とする。なお、スタンド油は、原料乾性油を空気を遮断して加熱重合させたものである。

[福住一雄]

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改訂新版 世界大百科事典 「ボイル油」の意味・わかりやすい解説

ボイル油 (ボイルゆ)
boiled oil

乾性油または半乾性油に乾燥剤を添加し,空気吹込み,加熱処理を行って,油性塗料用の油脂として乾燥性を高め,乾燥所要時間を短くしたものをいう。乾性油などは不飽和度の高い脂肪酸を多く含み薄膜状にして空気中に置くと乾燥皮膜を生ずるが,乾燥所要時間をさらに早くして実用上便利なものにするためこの処理を行う。使用油脂はアマニ油,荏油(えのあぶら),麻実油,サフラワー油,ダイズ油など。また,乾燥剤としては鉛,マンガン,コバルトなどの酸化物,および金属セッケン,ナフテン酸セッケンなどで,使用量は0.1~0.5%。加熱処理は酸化物,無機塩系では220~280℃,有機塩の場合は比較的低温(90~140℃)で行われる。乾燥時間が短くなる理由は,乾燥剤による油脂の酸化重合の促進,予備加熱による酸化重合の誘導期間の短縮,天然抗酸化物質の破壊などといわれる。製品の粘度は0.8ポアズ以下,乾燥時間は16~20時間以内である。塗料用として油ペイント,油ワニス,調整ペイントなどに用いる。
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化学辞典 第2版 「ボイル油」の解説

ボイル油
ボイルユ
boiled oil

あまに油きり油,魚油などの乾性油のこと.半乾性油またはそれらの混合油に,触媒として鉛,マンガン,コバルトの酸化物を加えて,120~150 ℃ で空気を吹き込みながら酸化重合させた油.ボイル油が乾燥して生じる皮膜を利用したものが油ペイント油ワニスなどの油性塗料である.

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百科事典マイペディア 「ボイル油」の意味・わかりやすい解説

ボイル油【ボイルゆ】

亜麻仁油などの乾性油に金属酸化物,金属セッケンなどのドライヤー(乾燥剤)を加えて製造した油。乾燥性が高く,その油膜は短時間に硬化するので,油性ペイントなどの原料として用いられる。
→関連項目乾性油展色剤

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ボイル油」の意味・わかりやすい解説

ボイル油
ボイルゆ
boiled oil

乾性油に乾燥剤を加えて加熱し乾燥性を改良した油。加熱温度や乾燥剤などの違いによって各種のボイル油が製造されている。原料は亜麻仁油,えの油,麻実油,きり油,大豆油などの乾性油で,ペイント,温床紙,防水布などの製造に利用される。

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世界大百科事典(旧版)内のボイル油の言及

【乾性油】より

…亜麻仁油などの乾性油にドライヤーを加えて130℃以上に加熱すると,著しく乾燥性が促進される。これをボイル油という。適当に乾燥させたボイル油に顔料を加えて練ったものがペイントである。…

※「ボイル油」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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