日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ホールデン(John Burdon Sanderson Haldane)
ほーるでん
John Burdon Sanderson Haldane
(1892―1964)
イギリスの生理学者、遺伝学者。とくに1920年代に始まるダーウィニズムをメンデル遺伝学の概念に基づいて再建した一連の研究は、近代的な進化機構論の建設に大きな足跡を残した。生物学以外に、数学、古典学、哲学の分野でも非凡な才能を示したほか、科学と人類の未来、科学と政治などに関する数多くの啓蒙(けいもう)的な記事を発表し、当時のイギリスの知識層に大きな影響を与えた。1957年インドに移住し、初めはコルカタ(カルカッタ)の統計研究所で、のちにはブバネシュワルに新しくつくった遺伝と生物統計の研究所で、研究と指導にあたった。その偉大な学識と強烈な個性は多くの人々に深い感銘を与えた。20世紀におけるもっとも異色な生物学者の一人である。主著に『ダイダロス』(1923)、『動物生物学』(1927、J・S・ハクスリーと共著)、『進化の要因』(1932)などがある。
[髙畑尚之]
『R・W・クラーク著、鎮目恭夫訳『J・B・S・ホールデン』(1972・平凡社)』▽『木村資生編『遺伝学から見た人類の未来』(1974・培風館)』
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