ホワイト(Patrick Victor Martindale White)(読み)ほわいと(英語表記)Patrick Victor Martindale White

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ホワイト(Patrick Victor Martindale White)
ほわいと
Patrick Victor Martindale White
(1912―1990)

オーストラリアの小説家、劇作家。シドニー近郊の牧場主の両親がロンドン滞在中に出生。牧場主見習(ジャカルー)生活2年後の1932~35年、ケンブリッジ大学近代語学部に学ぶ。在学中に詩集『13編の詩』(1930)、『耕す人ほか』(1935)を自費出版。以来46年まで、第二次世界大戦中イギリス空軍情報士官としてギリシア、中東駐在の5年間と数次の欧米旅行を含めて、14年間離国していた。この前後に、処女長編『ハッピー・バレー(幸福谷)』(1939)、『生者と死者』(1941)、『伯母物語』(1948)、『人間の木』(1955)、『ボス』(1957)、『戦車の乗員たち』(1961)などをイギリス、アメリカで刊行。この国の写実主義文学の伝統に、欧米の心理小説の流れを導入し、国内で3種の文学賞を4作品で受賞。続いて『まさしく曼陀羅(まんだら)』(1966)、『生体解剖者』(1970)に次ぐ『台風の目』(1973)を刊行直後に、ノーベル文学賞を受賞する。以後も『周辺の木の葉』(1976)、『トワイボン・アフェア』(1979)と着実に創作活動が続き、回想記『放蕩(ほうとう)息子』(1958)と自伝『鏡のひび割れ――自画像』(1980)も刊行した。ほかに短編集『火傷(やけど)した人々』(1964)と『コカトー(小地主)』(1974)、劇作に『戯曲四種』(1965)、『大きな玩具(がんぐ)』(1978)、『信号操縦者』(1983)などがある。

[平松幹夫・古宇田敦子]

『岩渕寿津訳『伯母物語』(『ノーベル賞文学全集26』所収・1976・主婦の友社)』『越智道雄訳『ヴォス――オーストラリア探検家の物語』上下、改訂新版(1997・サイマル出版会)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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