ホロムイソウ(英語表記)Scheuchzeria palustris L.

改訂新版 世界大百科事典 「ホロムイソウ」の意味・わかりやすい解説

ホロムイソウ
Scheuchzeria palustris L.

湿原にはえるホロムイソウ科の多年草。根茎はミズゴケの中を横にはい,節から葉を束生する。葉は直立し,細くて硬く,断面は半円形,長さ10~30cm。先端に排水孔があり,基部に葉鞘(ようしよう)と葉舌がある。夏に高さ10~20cmの花茎を直立し,数枚の葉を互生につける。花茎の上部の葉は小さな苞となり,腋(えき)に花をつける。花は両性で,花被は6枚あり,黄緑色。おしべは6本で花糸があり,葯は細長い。心皮は3個あってほとんど離生し,基部でわずかに合生している。胚珠は各心皮内に2個できる。種子は楕円形で長さ約3mm,種皮褐色で硬く,中に胚乳はなく,緑色の大きな子葉がある。北半球のミズゴケのある湿原に広く分布している。日本では北海道札幌近郊の幌向(ほろむい)で最初に発見されたため,この名で呼ばれる。北海道から本州中部まで分布し,現在知られる南限は京都市深泥池(みどろがいけ)である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ホロムイソウ」の意味・わかりやすい解説

ホロムイソウ
ほろむいそう / 幌向草
[学] Scheuchzeria palustris L.

ホロムイソウ科(APG分類:ホロムイソウ科)の抽水性多年生水草。1属1種。地下茎は横にはい、古い葉鞘(ようしょう)に覆われる。葉は線形で長さ10~25センチメートル、先端に小孔がある。初夏、高さ約25センチメートルの花茎を出して上方淡緑色の総状花序をつくり、径約5ミリメートルの数個の花を開く。花被片(かひへん)6枚、雄しべ6本、雌しべ3本。約7ミリメートルの果実がつく。高層湿原に生え、中部地方以北の本州、北海道、および北半球の温帯から亜寒帯に分布する。名は、北海道・石狩の幌向(ほろむい)で最初に発見されたことによる。

[大滝末男 2018年9月19日]

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世界大百科事典(旧版)内のホロムイソウの言及

【湿原】より

…ミズゴケ類でもり上がった小凸地hummock(ブルト)には,レンゲツツジ,ヒメシャクナゲ,ノリウツギなどの低木や,ヤマドリゼンマイ,ヌマガヤなどが生育する。小凹地hollow(シュレンケ)や湛水(たんすい)シュレンケpoolには,ミカヅキグサ,ヤチスギラン,ホロムイソウなどや,ハリミズゴケ,ウツクシミズゴケなどの半水生のミズゴケが生育する。池塘(ちとう)pond(ブレンケともいう。…

※「ホロムイソウ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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