ホルモン受容体異常症(読み)ほるもんじゅようたいいじょうしょう(英語表記)hormone receptor disease

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ホルモン受容体異常症」の意味・わかりやすい解説

ホルモン受容体異常症
ほるもんじゅようたいいじょうしょう
hormone receptor disease

すでに知られている内分泌・代謝疾患のうち、ホルモンの作用機構の異常という共通した病態に起因するとみられるものを総括した疾患群で、ホルモン受容機構異常として厚生労働省指定の特定疾患(難病)にあげられている。ホルモンは標的器官受容体レセプター)と特異的に結合して作用するが、その受容体の数、結合能、特異性に異常があり、そのためにホルモン作用の発現に異常が認められるものがホルモン受容体異常症で、偽性副甲状腺(せん)機能低下症、腎(じん)性尿崩症睾丸(こうがん)性女性化症候群、バーター症候群バセドウ病、悪性眼球突出症、副腎皮質刺激ホルモンACTH)不応症、インスリン抵抗性糖尿病、甲状腺刺激ホルモン(TSH)不応症、成長ホルモン不応症(ラロンLaron型低身長症)、肥満症などが含まれる。大部分は受容体自体の先天的または後天的異常によるものであるが、特異な型としてホルモン受容体に対する抗体、とくに自己抗体による機能異常があり、多くは阻止抗体でホルモン不応症の状態になるが、なかにはバセドウ病のように促進的な作用を示す刺激抗体もある。

[高野加寿恵]

症状

大部分が受容体の機能低下で、ホルモン機能低下症と類似するため、ホルモン不応性症候群ともよばれる。しかし、例外的に機能亢進(こうしん)症状を呈するものもある。

[高野加寿恵]

治療

ホルモン欠乏症状に対する補償療法を行うが、先天性受容体欠損によるものが多く、一般に治療は困難である。受容体抗体による異常症には免疫抑制剤によって自己抗体産生を抑制する。

[高野加寿恵]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

内科学 第10版 「ホルモン受容体異常症」の解説

ホルモン受容体異常症(内分泌系の疾患)

 ホルモンは標的細胞の細胞膜受容体または核内受容体に結合し,細胞内情報伝達や転写を調節することにより生理活性を発現するが【⇨12-1】,受容体の異常によりホルモンの作用に異常をきたす疾患群をホルモン受容体異常症とよぶ.ホルモン受容体の不活化変異では機能低下症(loss-of-function)となり,活性型変異では機能亢進症(gain-of-function)を呈する.大部分は不活性型変異であるが,ごく少数に活性型変異がみられる.狭義には先天性ホルモン受容体遺伝子の異常に基づくものを指すが,広義には受容体以降の細胞内情報伝達系の諸因子の遺伝子異常も含める.[杉山 徹・小川佳宏]
■文献
DeGroot LJ, Jameson JL, et al: Endocrinology, 6th ed, W.B. Saunders, 2010.
Larsen PR, Kronenberg HM, et al: Williams Textbook of Endocrinology, 10th ed, Wilson Churchill Livingstone, 2002.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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