ホリスティック医療(読み)ホリスティックいりょう

百科事典マイペディア 「ホリスティック医療」の意味・わかりやすい解説

ホリスティック医療【ホリスティックいりょう】

holisticは〈全体〉を意味するギリシア語のholosが語源。whole(全体の),holly(神聖な),heal(癒す),health(健康)などの言葉とも関連がある。日本語では〈全人的〉〈包括的〉とも訳されるが,内容をすべて表現できていないとの判断から,カタカナのまま使われることが多い。 臓器(身体)だけをみる西洋医学と,臓器と臓器の関係と空気()を扱う東洋医学を結合させ,さらに心の問題を含めた全体を視野におさめることを基本とする。この概念は1960年代に米国で提唱され始めた。西洋医学を中心とした先進医療・ハイテクノロジー医療が急激に進む一方で,人間が本来もつ自然治癒力や癒しの環境を改めて見直そうという動きであった。 日本では,帯津三敬病院(埼玉県川越市)の帯津良一院長が1984年からホリスティック医療を実践し,主に(がん)治療において西洋医学と東洋医学との融合(同病院では中西医結合と呼んでいる)を図り,大きな成果を上げている。1979年には米国で,1987年には日本でも,ホリスティック医学協会(JHMS)が発足した。 日本ホリスティック医学協会が定義する〈ホリスティック医学〉とは,(1)ホリスティック(全体)な健康観に立脚する(人間を有機的結合体ととらえ,社会・自然・宇宙との調和に基づく全体的な健康観に立つ),(2)自然治癒力を癒しの原点におく(生命が本来持つ自然治癒力を高め,増強することを治療の基本とする),(3)患者が自ら癒し,治療者は援助する(治療よりも養生が,他者療法よりも自己療法が基本,ライフスタイルを改善して患者自身が自ら癒す),(4)さまざまな治療法を統合的に組み合わせる(西洋医学の利点を活かしながら,中国医学インド医学心理療法,自然療法など種々の療法を組み合わせる),(5)病への気づきから自己実現へ(病気を自分への警告ととらえ,より高い自己成長,自己実現を目指す),を特徴とする医学である。→代替療法

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