ホトトギス(ユリ科)(読み)ほととぎす

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ホトトギス(ユリ科)」の意味・わかりやすい解説

ホトトギス(ユリ科)
ほととぎす / 杜鵑草
[学] Tricyrtis hirta (Thunb.) Hook.

ユリ科(APG分類:ユリ科)の多年草。茎はやや斜上して高さ60センチメートル、葉とともに開出する粗毛を密生する。葉は約10枚が互生し、ササに似て長さ10~15センチメートル、先は細くとがり、基部は茎を抱く。9月ころ、上方の葉腋(ようえき)に径約3センチメートルの6弁花を1、2個ずつ上向きに開く。花は白地紫斑(しはん)入りで、鳥のホトトギスの胸模様を思わせるので、名がついた。白色花の品種もある。山道のわきや崖(がけ)に生え、関東地方南部以西の本州から九州に分布する。

 ホトトギス属は、日本には主として西日本を中心に約10種分布する。いずれも夏から秋に開花し、草姿に野趣があり、庭植えや切り花用として愛好者が多い。ホトトギスにもっともよく似たヤマジノホトトギスT. affinis Makinoは茎に下向きの毛が生え、日本全土に分布する。ヤマホトトギスT. macropoda Miq.は茎頂に多くの花を開き、本州から九州に分布する。ほかに夏咲きで黄色のタマガワホトトギスT. latifolia Maxim.、秋咲きで黄色花のキバナノホトトギスT. flava Maxim.や、極矮性(わいせい)種のチャボホトトギス(矮鶏杜鵑草T. nana Yatabe、崖から垂れ下がって生え、半開の黄色花を下向きにつけるジョウロウホトトギス(上﨟杜鵑草)T. macrantha Maxim.などがある。

 ホトトギスやキバナホトトギスは庭や鉢植えでよく育ち、切り花栽培もされる。条件のむずかしいジョウロウホトトギスはミズゴケなどで鉢植えとし、夏の日照を加減しながら、乾燥に注意して育てる。

[鳥居恒夫 2018年12月13日]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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