日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ホットスポット(放射能)
ほっとすぽっと
hot spot
エネルギーや化学物質が特別に高い値を示したり、ときに犯罪が多発する地域など、さまざまな事象が周辺部よりも顕著に生じる特殊な地点や環境をいう。2011年(平成23)3月に起きた東京電力福島第一原子力発電所の事故が原因で放射性物質が飛散し、局地的に空間放射線量が高くなっている地点がホットスポットとよばれたことにより、広く使われるようになった。
福島第一原子力発電所事故では、当初、放射性物質の発生源である発電所から同心円状の地域で放射能汚染が深刻化することが予想されたが、自治体などの調査から東日本の広い地域で局地的に高い放射線量を示す地点が次々と明らかになった。放射能汚染はヨウ素や特定のセシウムなどの放射性物質が空間に飛散して広がることによる。このとき、放射性物質は空気中のちりなどに付着し、風の影響で遠くへ運ばれ、雨や雪などが降れば、いっしょに地表へ落ちると考えられている。そのため、事故発生後数日間の発生源と天候の状態がとくに汚染と関係していることがわかり、放射性物質を帯びた雲による降雨があった発電所の北西方向の福島県の広い地域や、関東平野に点在する雨が降った地域などで高放射線量地点が確認された。さらに細かく放射線量を測定していくと、水が集まる排水溝や落ち葉が風で吹きだまる所、河川の一部分や下水処理施設など、風や雨水に含まれる放射性物質が集まってとどまる場所に、ホットスポットが生じていた。該当地域では放射性物質を洗い流す、あるいは、土壌ごと除去する方法で除染が行われている。
[編集部]