ホタルブクロ(読み)ほたるぶくろ

改訂新版 世界大百科事典 「ホタルブクロ」の意味・わかりやすい解説

ホタルブクロ (蛍袋)
bellflower
Campanula punctata Lam.

キキョウ科多年草山地日当りのよい道路わきや林縁の草地にふつうに生える。花は総状につき,花冠は大きくつり鐘状で,長さ4~5cmにもなり,ツリガネソウともいう。ホタルブクロの名は,花がホタルを入れる袋にたとえられたという説と,〈火垂(ほた)る袋〉つまり提灯にたとえられたものだという説がある。日本全国のほか朝鮮や中国にも分布し,夏から秋にかけて咲く。茎は高さ40~80cm,全体に白色のあらい毛が多い。根葉は卵心形で長い柄があり,茎葉は三角状卵形で,葉身は葉柄に流れて翼になる。花は淡紅紫色で,濃紫色の斑点がある。萼は裂片の間が反り返って下向きの副片になる。副片のないものはヤマホタルブクロssp.hondoensis Kitam.と呼ばれ,本州中部の特産とされているが,中間的な形を示す株もある。両者ともに白花品もある。山草として観賞用にされる。

 ホタルブクロ属Campanula(英名bellflower)は,約300種が北半球の温帯ないし寒帯地方に分布する。ツリガネニンジン属によく似ているが,花柱の基部に花盤ができない。花の美しいものはカンパニュラの名で観賞用とされる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ホタルブクロ」の意味・わかりやすい解説

ホタルブクロ
ほたるぶくろ / 蛍袋
[学] Campanula punctata Lam.

キキョウ科(APG分類:キキョウ科)の多年草。梅雨期に開花するので、アメフリバナともいう。茎は高さ40~80センチメートル。根出葉は卵状心形で長い柄がある。茎葉は互生し、長卵形で先はとがる。6~7月、淡紅紫色または白色の花を下向きに開く。花冠は鐘形で先は5裂し、萼片(がくへん)の間に反曲する付属片がある。丘陵から山地の畦(あぜ)、道端野原に生え、北海道南西部から九州、および朝鮮半島、中国、ウスリーなどに分布する。名は、花冠の袋に子供がホタルを入れて遊んだことによる。萼片の間の付属片が反り返らない変種をヤマホタルブクロといい、花冠は紅紫色で細点がある。花冠が小形で純白色のシマホタルブクロは伊豆諸島に分布する近縁種である。

[高橋秀男 2021年10月20日]


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百科事典マイペディア 「ホタルブクロ」の意味・わかりやすい解説

ホタルブクロ

キキョウ科の多年草。北海道西南部〜九州,東アジア山野にはえる。茎は直立し,高さ50cm内外。葉は互生し,長卵形で茎とともに毛がある。6〜7月,茎頂葉腋に鐘形の花を下向きに開く。花冠は長さ4〜5cm,花色は紅紫色〜白色まで変化に富む。

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世界大百科事典(旧版)内のホタルブクロの言及

【カンパニュラ】より

…キキョウ科ホタルブクロ属Campanulaの植物。Campanulaはラテン語起源のことばで,小さい釣鐘の意であり,英名も花の形が釣鐘状であるところから名付けられた。…

※「ホタルブクロ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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