ペルオキソクロム酸塩(読み)ペルオキソクロムサンエン

化学辞典 第2版 「ペルオキソクロム酸塩」の解説

ペルオキソクロム酸塩
ペルオキソクロムサンエン
peroxochromate

高酸化数のCrのペルオキソ錯体には,たとえば,CrのM3[Cr (O2)4],CrのM2[Cr2O2(O2)5],M[CrO(O2)2OH](M = K,NH4,TIなど),CrのN配位子を含む比較的安定な混合錯体などがある.【】M3[Cr (O2)4](M = K,Na,NH4など):正式名テトラキス(ペルオキソ)クロム(Ⅴ)酸塩[CAS 12526-97-5].K3CrO8(297.27);Cr O8の濃水溶液に過剰のKOHを加え,氷冷して,H2O2を加えると得られる.同様な手法で,Na,NH4塩なども得られる.K塩は,赤~赤褐色の正方晶系柱状晶.[CrO8]3- は,Cr原子のまわりに4個の O22- が正四面体型に位置して,それぞれがキレート二座配位し,計8個のO原子は正十二面体型に配置している.Cr-O約1.87,1.97 Å,O-O約1.47 Å.∠O-Cr-O約46°(キレート環),90~95°(異 O2 間),∠Cr-O-O約71,64°.常磁性で,不対電子1個をもつ.室温では安定だが,加熱すると分解し,さらに高温では爆発することもある.冷水には難溶.水溶液に酸を加えると Cr錯体にかわって青変し,これはエーテルで抽出可能である.

   [Cr(O2)4]3- + 2H + H2O →

】M2[Cr2O2(O2)5](M = K,NH4など):正式名は,ジオキソペンタキス(ペルオキソ)二クロム(Ⅵ)酸塩[CAS 12331-76-9].M[CrO(O2)2OH]と書くこともある.二クロム酸塩(K,NH4塩など)の弱酸性塩酸水溶液にH2O2を加えるか,エーテル中でCrO3とH2O2とをまぜ,これにKOH(またはNH3など)のエタノール溶液を加えて反応させると生成する.固体には,-O-O-または-OOHが含まれると思われるが,構造は明らかでない.反磁性の暗紫青色の不安定な固体.加熱,衝撃,濃硫酸添加などで爆発する.水に可溶.水溶液は紫色を呈する.酸性水溶液からこの着色物をエーテルで抽出できる.室温の空気中では固体は徐々に分解して二クロム酸塩にかわる.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内のペルオキソクロム酸塩の言及

【過酸化物】より

…過酸化物は強力な酸化剤であるが,H2O2などは過マンガン酸などのようにさらに強い酸化剤と反応するときにはむしろ還元剤として作用する。なお,ペルオキソクロム酸塩MI3CrO8(4個のO22-がCr(V)に配位した化合物),ペルオキソ炭酸塩MI2CO4(一般にMI2CO3aH2O2bH2Oの組成で与えられる),ペルオキソチタン酸塩H4TiO5(実はTiO3・2H2O)など多くの金属のペルオキソ酸塩も過酸化物と呼ばれることがある。また,過酸化ジアルキルR-O-O-R′や過酸化アシルRCO-O-O-COR′などのように,-O-O-結合を有する有機化合物も過酸化物と呼ばれる。…

※「ペルオキソクロム酸塩」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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