日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ベーコン(Roger Bacon)
べーこん
Roger Bacon
(1214/1220―1292以後)
イギリス中世の哲学者、科学者。驚異博士Doctor mirabilisと称される。サマーセット県イルチェスターの生まれ。オックスフォード大学およびパリ大学に学び、アリストテレスの自然学などを講じた。オックスフォード大学に戻っては自然学と言語の研究を行い、やがてフランシスコ会に入った。経験学scientia experimentalisを提唱し、知識はすべて経験に基づくとする。ただし、経験には感覚によるもののほかに、神的照明によるものも含まれるとする。経験(実験)の重視、光学における業績、工学的予見などのために、近代科学の先駆者とされる。また言語研究を重んじたが、それは聖書と当時の黙示文学書(占星術・錬金術を含む)の内にすべての知識がみいだされるとの素朴な信念のゆえでもあった。
[清水哲郎]
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