ベーコン(豚肉の加工品)(読み)べーこん(英語表記)bacon

翻訳|bacon

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ベーコン(豚肉の加工品)
べーこん
bacon

豚肉の加工品。ベーコンという名称は本来は豚肉の部位名で、わき腹肉(一般に三枚肉、ばら肉ともいう)のことである。この部分の肉を塩漬(えんせき)、薫煙(くんえん)したものもベーコンとよばれるようになった。

河野友美・山口米子]

製法

製法はハムとほとんど同じで、使用する肉の部位と塩漬の方法が異なる。また、ハムは湯煮(ゆに)を行うが、ベーコンでは普通、湯煮をしない。豚のわき腹肉を枝肉から切り取り、血絞りを行ったあと塩漬する。塩漬に用いる塩は肉の重量に対して4~6%で、塩以外に糖類、香辛料などの調味料と発色剤、防腐剤などの添加物を加える。発色剤は、肉色を美しい赤色に安定させる効果をもつ。塩漬の目的は、肉の色沢、風味、組織などを整え、保存性をもたせることである。塩漬期間は肉1キログラム当り3~4日要する。塩漬が済んだら余分の塩をとるために水に浸し、必要に応じて肋骨(ろっこつ)や胸骨を除いて整形する。これを軽く乾燥してから薫煙を行う。薫煙すると肉の表面の細菌が減少し、保存中の細菌の増殖が防げる。また、薫煙の煙の成分であるアルデヒドフェノール類が肉に浸透し、肉の保存性が高まる。さらに肉によい風味をつけ、脂肪の酸化を防ぐこともできる。

[河野友美・山口米子]

種類

ベーコンの種類は材料肉の部位によって分類されている。通常ベーコンというとわき腹肉を用いたものである。他の部位を用いたものは、JAS(ジャス)(日本農林規格)で、ロース肉を用いたロースベーコン、かた肉を用いたショルダーベーコン、そのほか、胴肉を用いたミドルベーコン、半丸枝肉(半身)を用いたサイドベーコンに区別されている。カナディアンベーコンといわれているものは、あばら骨をつけたままのロース肉を用いたものである。ロース肉やかた肉を用いたものは、わき腹肉のベーコンに比べ脂肪が約3分の1である。日本では皮なしでスライスしたものが主流であるが、欧米では皮付きやかたまり肉のものもよく使われる。クジラベーコンというのは、鯨肉の畝(うね)の部分を用いて塩漬、湯煮、薫煙した日本特有の加工品である。

[河野友美・山口米子]

栄養

豚肉加工品のなかでもとくに脂肪の多い食品で、高エネルギー、高脂肪食品である。通常のベーコンは約40%が脂肪である。タンパク質は13%で、ハムや豚もも肉に比べてやや少ない。塩分は2%強含まれる。

[河野友美・山口米子]

調理

特有の薫煙による風味やうま味と脂肪が料理に利用される。シチュースープにこくを与え、ベイクドビーンズなど豆の煮物の風味づけによい。ベーコンエッグやかりかりに焼いたベーコンは朝食用に愛用されている。塩味が強いので、ベーコンを用いた場合には塩味を控え目にする。湯通しして用いると脂肪が流出して油っこさが和らげられる。

[河野友美・山口米子]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android