ベーア(英語表記)Baer, Karl Ernst von

精選版 日本国語大辞典 「ベーア」の意味・読み・例文・類語

ベーア

(Karl Ernst von Baer カール=エルンスト=フォン━) エストニア生まれのドイツの博物学者。哺乳類卵細胞、各種動物の胚における胚葉脊索などを発見し、発生に関する学説提唱主著「動物発生学」。(一七九二‐一八七六

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ベーア」の意味・わかりやすい解説

ベーア
Baer, Karl Ernst von

[生]1792.2.29. ピープ
[没]1876.11.28. ドルパト
エストニア生れのドイツの動物学者。近代動物発生学の建設者の一人。ドルパト大学で医学を修めた (1814) のち,ドイツ,オーストリア留学 (14~17) 。ウュルツブルク大学で比較解剖学を学んだのが動機となって,発生学に向う。 1817年よりケーニヒスベルク大学で教え,19~34年の間,発生学で多くの重要な業績を上げた。 27年すべての動物が卵より発生することを明らかにしたほか,28年に,C.パンダーが提示した (17) 説を発展させて胚葉説を立てた。完成された形で胚葉説の提示が行われたのは『動物の発生史について』 Über Entwickelungsgeschichte der Thiere (2巻,28,37) においてであるが,同書では発生原則も論じられている。 34年,ドイツを去ってペテルブルグに移り,ロシア科学アカデミー正会員となったが,このときに発生学もやめ,以後,地理学,人類学,民族学の調査,研究に従う。ロシア地理学会,ロシア昆虫学会,ドイツ人類学会の設立に貢献。 67年引退してエストニアに戻る。なお,彼は,C.ダーウィンとは独立進化概念に到達し,類似した動物同士は共通祖先をもつと考えていた。しかし,全生物を単一の祖先に由来するものとみるダーウィンの学説には強硬に反対した。

ベーア
Bähr(Beer, Behr), Georg

[生]1666.3.15. フュルステンワルト
[没]1738.3.16. ドレスデン
ドイツの建築家。主としてドレスデンで活躍し,1705年から市の主任建築家をつとめる。イタリアの後期バロック建築の影響を受け,感覚的効果をねらった過剰なまでの装飾を特徴とし,キリスト教聖堂建築の発展に大きく寄与した。作品はフラウエン聖堂 (1726~43,ドレスデン,第2次世界大戦で破壊) など。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「ベーア」の意味・わかりやすい解説

ベーア
Karl Ernst von Baer
生没年:1792-1876

ドイツの動物発生学者。エストニア生れ。発生学上の主たる業績はケーニヒスベルク大学時代(1819年に教授)になされているが,後にペテルブルグに赴き各地を旅行して,人類学,人種学,考古学,言語学を研究した。哺乳類の卵や脊索を発見し,胚葉説を確立した。比較発生学上の知見として,(1)動物群に共通の特徴は胚の早期に形成される,(2)形成は一般的なものから特殊なものへ進む,(3)特定の動物系に属する胚は,他の諸型から離れていく,(4)高等動物系の胚は,他の動物系の胚に類似している,の4点を発生法則(フォン・ベーアの法則)として提示した。対称性を基準にして,動物の型を放射型,環節型,等質型,二重対称型(脊椎動物)に分けている。生物の変異に関しては,各型の内部での限定的変異を認めたが,進化論一般は否定した。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「ベーア」の意味・わかりやすい解説

ベーア

ドイツの動物発生学者。エストニア生れ。ドルパート,ビュルツブルク等の大学に学び,のちケーニヒスベルク大学教授。哺乳(ほにゅう)類の卵や脊索を発見。また胚葉説を確立し,諸動物の発生を比較して発生初期に共通する傾向を指摘(〈フォン・ベーアの法則〉)するなど,近代動物発生学の基礎をつくった。主著に《動物発生学》。
→関連項目コワレフスキー

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内のベーアの言及

【後成説】より

…古代のアリストテレスにはじまり,17世紀のW.ハーベー,18世紀のC.ウォルフをへて,19世紀にいたり近代的な体裁をもつようになる。K.E.vonベーア(1828)は,各種動物の比較研究にもとづき,すべての動物は発生初期には同一の胚葉構造をもち,発生が進行するとともに各動物の個性があらわれてくると説いた。同世紀末にはじまる実験発生学は,後成説の主張に決定的な根拠をあたえた。…

【生命】より

…かれはそれを含め,生命現象を生命力的な概念によって説明した。後成説は19世紀前半になりK.E.vonベーアの動物学的研究で確立された。ついで1860年ころは他の二大問題にとって重大な時期となった。…

※「ベーア」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

靡き

1 なびくこと。なびくぐあい。2 指物さしものの一。さおの先端を細く作って風にしなうようにしたもの。...

靡きの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android