ベントレー(Wilson Alwyn Bentley)(読み)べんとれー(英語表記)Wilson Alwyn Bentley

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ベントレー(Wilson Alwyn Bentley)
べんとれー
Wilson Alwyn Bentley
(1865―1931)

アメリカの雪の研究家。バーモント州ジェリコの農家に生まれる。15歳のときに母親のもっていた顕微鏡で雪の結晶を観察して以来その美しさに魅せられ、ついに生涯を雪の顕微鏡写真を撮ることに捧(ささ)げた。雪の研究のために撮影された写真は5000枚を超え、写真集『雪の結晶』Snow Crystalsが1931年、彼の死の直前にアメリカ気象学会の援助によって出版された。また約10編の論文を、アメリカ気象学会誌とアメリカ写真年鑑に発表している。終生独身で過ごし奇行も多かったが、時代に先んじた彼の洞察は高く評価されるべきである。雪の結晶形が上空の気温の変化を反映していることを見通し、1902年のアメリカ気象学会誌の論文中に「生涯の歴史がこれ以上に優美な象形文字(ヒエログリフ)で書かれたものがあったろうか」と述べている。これはのちの中谷宇吉郎(なかやうきちろう)が「雪は天から送られた手紙」といったことば原形とみられるものである。

小林禎作・前野紀一]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android