ベルリン石(読み)べるりんせき(英語表記)berlinite

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベルリン石」の意味・わかりやすい解説

ベルリン石
べるりんせき
berlinite

リン酸塩鉱物。無水リン酸塩鉱物としてもっとも単純な化学組成のものの一つ。ベルリン石系を構成する。Al[PO4]の化学組成が暗示するように、石英とほぼ同構造の三方晶系対掌半面像に属するが、単位格子c軸が2倍になる。自形は報告されていない。

 火砕岩に対する比較的高温熱水交代作用産物として生成された変質岩中に産し、またいわゆるリン酸塩ペグマタイト中にも産するが、比較的低温条件で変質安山岩中に生成されたものが、オーストラリアなどから報告されている。また、広域変成岩中に発達するいわゆる変成ペグマタイト中、アルミニウムケイ酸塩やアルミニウムリン酸塩に富むものからも知られている。日本での産出は知られていないが、その仮晶(結晶体の外形が残されたまま内部構造が別のもので置き換えられているもの。構成物質が同一の場合は仮像ともいう)と思われるものが、山口県阿武(あぶ)郡阿武町日の丸奈古(ひのまるなこ/ひのまるなご)鉱山閉山)のリン酸塩鉱物の集合中から発見されている。

 共存鉱物はオージェル石、フッ素燐灰石、鉄天藍(てんらん)石、石英、白雲母(うんも)、赤鉄鉱、藍晶石、葉ろう石、明礬(みょうばん)石、石膏(せっこう)、あられ石、ハント石huntite(化学式CaMg3[CO3]4)、硝石など。同定硬度比重も断口も石英そっくりで区別がつかない。ただ紫外線で発光するものがあるので、これが確認できれば識別できることがある。命名スウェーデンのルントLund大学薬理学教授ニルス・ヨハン・ベルリンNils Johan Berlin(1812―1891)にちなむ。

[加藤 昭 2018年7月20日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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