ベルヌーイの定理(読み)ベルヌーイのていり(英語表記)Bernoulli's theorem

精選版 日本国語大辞典 「ベルヌーイの定理」の意味・読み・例文・類語

ベルヌーイ の 定理(ていり)

流体流速圧力との関係を数量的に表わした法則粘性がなく、縮まない流体の定常流ではその流線に沿う任意の点で p+½ρv2gh の値が一定となる(pは圧力、ρは密度、vは流速、gは重力加速度、hは高さ)。一七三八年D=ベルヌーイが発表。

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デジタル大辞泉 「ベルヌーイの定理」の意味・読み・例文・類語

ベルヌーイ‐の‐ていり【ベルヌーイの定理】

粘性のない流体の定常流では、流線に沿って単位面積当たりのエネルギー保存の法則が成り立つという定理。流速・圧力・密度・高さの関係式で表される。1738年にD=ベルヌーイが発表。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベルヌーイの定理」の意味・わかりやすい解説

ベルヌーイの定理
べるぬーいのていり
Bernoulli's theorem

粘性が無視できる完全流体で、その密度が流れに沿って変化せず(水はこの典型である)、かつ定常的に流れている場合、流線に沿って関係式
  Hp+(1/2)ρv2+ρΩ
が成り立つという定理。スイスのD・ベルヌーイが1738年に発表した。ここに、p静圧、ρは流体の密度、vは流速である。Ωは、流体に働く力Fポテンシャルである。地球上の重力の場合、ΩはΩ=gzと表される。gは重力加速度zはある基準点から測った流体の高さを示す。ベルヌーイの定理は運動方程式を積分して得られるもので、流線上で流体のエネルギーHが保存されることを示している。Hの右辺第1項は圧力によって蓄えられる内部エネルギー、第2項は運動エネルギー、第3項は位置エネルギーを表している。ベルヌーイの定理は、いろいろな流体現象の説明や、流量や流速の測定器に応用されている。

 ベルヌーイの定理は、より一般的な流体について拡張される。流体の密度ρが圧力p関数で表される場合は、

を用いてH+(1/2)v2+Ωが一定となる(バロトロピー流という)。また、流れが定常的ではないが渦なしの場合、流れの速度v速度ポテンシャルΦで表される。この場合、

は渦なしの流れ全領域にわたって保存される。これを圧力方程式または一般化したベルヌーイの定理という。

池内 了]

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改訂新版 世界大百科事典 「ベルヌーイの定理」の意味・わかりやすい解説

ベルヌーイの定理 (ベルヌーイのていり)
Bernoulli's theorem

定常で粘性を無視できる流れの中での圧力,流速(運動エネルギー),位置エネルギーの間の関係を表す定理。その原型はD.ベルヌーイによって1738年に提出された。流体の流速をq=|v|,密度をρ,圧力をp,重力の加速度をg,ある任意の水平面からの高さをzとすれば,密度ρが一定という条件の下に,一つの流線に沿って,が一定というものである。この定理はρがpの1価関数(バロトロピック流体)で,外力がポテンシャルΩをもつ保存力であるときにも一般化され,が流線に沿って,また渦分布があるときには渦線に沿っても一定となる。ここで,は圧力関数と呼ばれ,密度一定の流れではp/ρ,等エントロピーの流れではエンタルピーとなる。また流線と渦線で作られ,そのうえでHが一定である面はベルヌーイ面と呼ばれる。Hの値は一般には流線ごとに異なるが,渦のない定常流ではいたるところでHが一定であり,また,非定常流でも渦なしで速度ポテンシャルΦ(こう配gradΦが速度vを与える)が存在すれば,圧力方程式(一般化されたベルヌーイの定理ともいう)が流れのいたるところで成立する(ft)は時間tの任意関数)。

 ベルヌーイの定理は,いわば圧力のなす仕事をとり入れた,単位質量の流体のエネルギー保存則であり,粘性のない完全流体に対してのみ成立するものである。粘性の影響の小さい流れでは近似的に成立するが,一般には粘性散逸によって流線に沿ってHの損失があることや,側壁からの加熱などの影響をとり入れて実用に供することができる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ベルヌーイの定理」の意味・わかりやすい解説

ベルヌーイの定理
ベルヌーイのていり
Bernoulli's theorem

非圧縮性の完全流体が重力のもとで流れる定常流においては,1つの流線に沿って,流体の速度の大きさ q ,圧力 p ,ある基準点からの高さ z の間に関係式 ρq2/2+p+ρgzp0 が成り立つ ( p0 は一定,ρ は流体の密度,g は重力加速度) 。これをベルヌーイの定理という。この定理は単位体積あたりの流体の運動エネルギー ρq2/2 ,圧力 p ,位置エネルギー ρgz についてのエネルギー保存則を表わしている。 ρq2/2 を動圧,p を静圧,全体の和 p0 を総圧ともいう。 D.ベルヌーイが 1738年に発表した。実際には完全流体でなくともわずかな修正で成立する場合が多く,ベンチュリ管ピトー管による流速測定の原理などに応用される。

ベルヌーイの定理
ベルヌーイのていり
Bernoulli's theorem

「1回の試行で,事象 E の起る確率が p であり,これらの試行が独立であれば,この試行を n 回繰返したとき,そのうち事象 E がちょうど r 回起る確率 Pr は Pr=nCrpr(1-p)n-r である」という定理を,ベルヌーイの定理という (→大数の法則 ) 。ただし nCr は,n 個の異なるものから r 個を取る組合せを表わす数であって
である。 J.ベルヌーイ (1世) が定式化した。

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百科事典マイペディア 「ベルヌーイの定理」の意味・わかりやすい解説

ベルヌーイの定理【ベルヌーイのていり】

縮まない完全流体が定常的に流れているとき,一つの流線に沿ってp+1/2ρv2+ρgh=一定という関係が成り立つという法則(pは圧力,ρは流体の密度,vは流体の速度,gは重力加速度,hは任意の水平面からの高さ)。これは流体の運動についてエネルギー保存の法則を表す。D.ベルヌーイによって1738年に提出された。
→関連項目ピトー管ベンチュリ管流量計

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化学辞典 第2版 「ベルヌーイの定理」の解説

ベルヌーイの定理
ベルヌーイノテイリ
Bernoulli theorem

非圧縮性で粘性のない理想流体に対して,一つの流管の任意の2断面における,エネルギー保存則を示した関係式をいう.一般に,流管中の任意断面での流速u,重力換算係数 gc,重力加速度g,基準面からの高さz,圧力p,流体密度ρとすると,

となる.これがベルヌーイの定理で,第1項を速度ヘッド,第2項を位置ヘッド,第3項を圧力ヘッドという.

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パラグライダー用語辞典 「ベルヌーイの定理」の解説

ベルヌーイの定理

「流体において、流れの速い部分は圧力が低く、流れの遅い部分は圧力が高い」ことが定理の基本であり、翼に発生する揚力を説明するにおいて大切なことである。詳しくは省略するがいろいろな文献が出回っているので調べてみるとおもしろい。

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