日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ベルヌーイ(Daniel Bernoulli)
べるぬーい
Daniel Bernoulli
(1700―1782)
スイスの数学者。ヨハン・ベルヌーイの次男として、オランダのフローニンゲンに生まれる。新設されたロシアのペテルブルグ科学アカデミーが父ヨハンに数学者の推薦を求めたため、兄のニコラスNicholas(1695―1726)に次いで1725年ペテルブルグ科学アカデミー教授となり、8年後に友人のオイラーを後任に推して、故郷のスイス、バーゼル大学教授となり、以後はフランスのパリ学士院を中心に活動した。ペテルブルグ時代の流体力学の建設については、そのパリ学士院賞受賞をめぐって父ヨハンから横やりが入り、その先取権を父子で争った。今日、流体力学の建設についてはベルヌーイ父子ということになっている。
ダニエルの名をとどめる業績は、1753年の「弦の振動論」である。弦の単振動解はテーラーによって得られていたが、一般の解としてそれを合成した三角級数解はダニエルによる。そのころ、別の解がダランベールによって得られ、それをめぐって関数とは何かについての深刻な議論が、オイラーを巻き込んでおこった。それは19世紀になって関数概念が確立していくための陣痛であった。また三角級数は、これも19世紀になってフーリエが熱伝導論にそれを応用するフーリエ級数の始まりであった。もっと一般的にみれば、「重ね合わせの原理」によって、一般の振動を単純な固有振動に分析総合することであり、19世紀以降の数理物理として関数解析の主題となるスペクトル解析の始まりでもあった。
[森 毅]