日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ベルナール(Sarah Bernhardt)
べるなーる
Sarah Bernhardt
(1844―1923)
フランスの女優。本名はロジーヌ・ベルナール。美貌(びぼう)と美声に恵まれ、熱気ある悲劇的演技で名声を得た。10月22日オランダ系ユダヤ人の母と放蕩(ほうとう)学生との間にパリに生まれた彼女は、幼いころは薄幸で、修道院に入り尼を志していた。演劇への興味はまったくなかったが、勧められてコンセルバトアールに入り、卒業後コメディ・フランセーズに加入するが認められず、私設劇場を転々とする。1869年にコッペの『行人』で主演、続いてユゴーの『リュイ・ブラース』の女王役が当たり、ふたたびコメディ・フランセーズに復帰。のちにアメリカ、カナダを巡演し、巨利を得た。名優コクランの相手役でその名はいよいよ高まり、『トスカ』『椿姫(つばきひめ)』などの当り役が続出、1899年にはサラ・ベルナール座を設立、堂々と男役ハムレットまでみごとに演じた。3月26日没。第一次世界大戦時には戦地慰問をするなど、愛国的精神に富んでいたサラは国民的芸術家として国葬の礼を受けた。
[加藤新吉]
『本庄桂輔著『サラ・ベルナールの一生』(1970・新潮社)』