ベルトロ(ベルテロー)(読み)ベルトロベルテロー

化学辞典 第2版 「ベルトロ(ベルテロー)」の解説

ベルトロ(ベルテロー)
ベルトロベルテロー
Berthelot, Pierre Eugène Marcellin

フランスの化学者.高等学校までは,文学哲学にすぐれた才能を発揮していたが,パリの医学校と理学校で学んだ.1851年コレージュ・ド・フランスにいたA.J. Balardの助手となったが,薬学校にも通い,1859年薬学校にあらたにつくられた有機化学教授に任命された.のちに,コレージュ・ド・フランスにおいても化学教授となる.1862年放電管に気体水素を流入させ,炭素電極間にアーク放電を飛ばすことにより,アセチレンが生成することを確認した.また,アセチレンを高温にさらすと,ベンゼンが生成することも示した.さらに,エテン硫酸とからエタノールを合成したが,これはかれが最初ではない.かれは,有機合成の新しい道を開拓したと主張したが,原子論に反対し,有機化合物の構造の問題には関心を示さなかった.のちにかれは政治上でも重要なポストを占めるようになり,自然科学上大きな影響力をふるったことから,かれの原子論反対の態度はフランスにおける化学の発展に対してマイナスとなった.有機合成の次には,熱化学の研究に取り組んだ.今日使われている“発熱反応”,“吸熱反応”という語は,かれの造語である.しかし,かれの考え出した最大仕事の原理は,正しくはなかった.1873年科学アカデミー会員に選ばれ,1889年終身書記長となった.かれはまた農芸化学にも関心をもち政府からパリ郊外に農地を得て植物生育実験を行い,植物による大気中の窒素固定の問題を解こうとした.かれは政治にも関心を示し,1881年には終身上院議員,さらに文部大臣外務大臣も経験した.そのこともあって,かれの死に際し,国は国葬をもってかれの業績を称えた.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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