ベラ(英語表記)wrasse

翻訳|wrasse

改訂新版 世界大百科事典 「ベラ」の意味・わかりやすい解説

ベラ
wrasse

スズキ目ベラ科Labridae魚類の総称。熱帯,亜熱帯,温帯の世界中の海洋の沿岸域に広く分布する。のどの左右の骨が肥大して癒合し,ここにがんじょうな歯がある。これは近縁のブダイ科と共通の特徴である。ブダイの仲間は両あごの歯が完全に癒合してくちばしを形成するが,ベラの仲間では両あごの歯は分離しているか,基板で癒合し歯板を形成する程度である。背びれは1基で棘状(きよくじよう)部が軟状部よりずっと大きい。色彩が豊かで,雌雄で体色,斑紋が異なるものが多く,また,若魚時代には成魚と異なる独特の色彩を示すものもある。さらに性転換するものも珍しくなく,若魚,雌,一次雄(もともと雄),二次雄(雌から性転換して雄になったもの)など構成が複雑である。そのため,同種でも若魚,雌,雄に別々の種名がつけられていたものも少なくない。600種ほどの種が存在するとされているが,整理されればずっと種数が減るものと思われる。

 日本周辺に分布するのは120種ほどで,南方系のものが多く,科としての分布の北限は本州中部である。小型種が多く,全長10cmに達しないものもあり,ふつうは大きくなっても30cm程度。ただしモチノウオ属には大型種が含まれ,なかでも沖縄にすむメガネモチノウオCheilinus undulatusは1.5mに達する。この種はインド洋~太平洋に広く分布するが,クイーンズランド沿岸では2.3m,190kgの記録がある。ベラ科中最大でgiant wrasseと呼ばれる。

 ベラ類には,雄がなわばりをつくりハレムを形成し,ペアで産卵するものと,群れで集団で産卵するものがあり,同種で両方の産卵形態をもつものもある。雌雄が産卵前にディスプレーや営巣をし,雄が卵を守るなど,いろいろの習性を発達させている種も多い。また,大きな魚などの外部寄生虫をおもな餌とする掃除魚cleaner fishとして知られる種類も含まれる。また,この類は夜眠る習性をもつことも有名で,水族館でも昼夜を逆転させた水槽を用意し,キュウセンなどが砂に潜って寝るようすが観察できるようにしているところもある。砂に潜るほか,岩の割れ目,海藻の間などに体を入れて眠る。アオブダイでは粘液で膜をつくりその中で眠ることが知られているが,ベラ類にもこういう習性をもつものもいる。人間など哺乳類では夢と関係があるREM(rapid eye movementの略)睡眠が,ある種のベラで観察されている。ベラも夢を見るのであろうか。食用として地域的に賞味される種類もあるが,一般には食用としても,遊漁の対象としても重要とはいえず,むしろ水族館の人気者である。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ベラ」の意味・わかりやすい解説

ベラ
Bellah, Robert Neelly

[生]1927.2.23. オクラホマ,アルタス
[没]2013.7.30. カリフォルニア,オークランド
アメリカ合衆国の宗教社会学者(→宗教社会学)。伝統的な宗教社会と社会変動との折り合いをつけるための革新的な手法を提示した。ハーバード大学人類学を学び,1955年社会学と東アジア言語で博士号を取得。カナダのマギル大学イスラム研究所,ハーバード大学中東研究センターで研究に従事した。1960~61年フルブライト奨学金を得て日本に留学。1961年にハーバード大学に戻り,1967~97年カリフォルニア大学バークリー校社会学フォード教授職を務めた。1997年にカリフォルニア大学社会学エリオット名誉教授に指名された。著作に『社会変革と宗教倫理』Beyond Belief: Essays on Religion in a Post-Traditional World(1970),"Varieties of Civil Religion"(1980,共著),『心の習慣:アメリカ個人主義のゆくえ』Habits of the Heart(1985,共著),"Religion in Human Evolution: From the Paleolithic to the Axial Age"(2011)などがある。2000年にアメリカ人文科学勲章を受章。

ベラ
Berra, Yogi

[生]1925.5.12. ミズーリ,セントルイス
アメリカ合衆国のプロ野球選手。本名 Lawrence Peter Berra。「ヨギ」は,ある映画に登場するインドのヘビつかいに似ていたことから友人につけられた子供時代の愛称。 1942年大リーグのニューヨーク・ヤンキーズと契約,マイナーリーグでのプレー,兵役を経て,1946年シーズン終盤に大リーグに昇格。 1949年までは外野手としてプレーすることが多かったが,その後 1963年までチームの正捕手の座を占めた。守備,攻撃両面で活躍し,1951,1954,1955年の3度にわたり,アメリカンリーグの最優秀選手 MVPに選ばれた。ワールドシリーズにも 14回出場し,通算 12本の本塁打を打った。ベラ独特の,論理性を欠いたユーモラスな言いまわし (たとえば「野球は 90%が精神力,残りの半分が体力だ」) は「ヨギイズム」と呼ばれ,ファンに親しまれた。引退後も監督,コーチとして活躍した。 1972年野球殿堂入り。

ベラ
Bella, Stefano della

[生]1610.5.18. フィレンツェ
[没]1664.7.12. フィレンツェ
イタリアの銅版画家。 J.カロ風の戦争を主題とした作品を多く残した。 1642年パリに行き,宰相リシュリューのために『アラス,サントメール,ラロシェルの包囲』を制作。 50年頃フィレンツェに帰った。版画作品は 1400点以上に及ぶ。主要作品『パリのポン・ヌフ風景』 (1646) 。

ベラ
Bela

インド北部,ウッタルプラデーシュ州南東部,ガンジス川平原西部にある町。ガンジス川の支流サイ川に面し,農産物の集散のほか若干の硝石と岩塩を採掘。土壌は肥沃で,米,オオムギ,雑穀,サトウキビ,アサなどを産する。 1802年に兵営が建設されたのが町の起源。人口6万 6845 (1991) 。

ベラ
Bela

パキスタン南西部,バルチスターン州南東部の町。アラビア海に注ぐポラーリ川東岸に位置し,小平野の中心地。中世にはペルシアとインダス川平野を結ぶ通商路の要衝であった。搾油用種子,雑穀類,羊毛,米などを集散し,絨毯などを産する。人口約 5000。

ベラ
Vera, Augusto

[生]1813
[没]1885
イタリアの哲学者。 1839~50年フランスで教職につき,59年からイタリアのミラノおよびナポリで哲学を教えた。ヘーゲル哲学の忠実な解説者,普及者。

ベラ

ベラ科」のページをご覧ください。

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百科事典マイペディア 「ベラ」の意味・わかりやすい解説

ベラ

ベラ科の魚の総称。ベラ科中,最も美味で産額も多いキュウセンをさすことが多い。ササノハベラ,ニシキベラなど120種が日本に分布。日本近海産のベラ類はコブダイを除くと一般に小型だが,熱帯や南半球には全長数mに達する,メガネモチノウオなどの大型種もいる。体は紡錘形で側扁し,体色の美しいものが多い。また夜眠る魚としても有名。

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