ベビン(読み)べびん(英語表記)Ernest Bevin

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベビン」の意味・わかりやすい解説

ベビン
べびん
Ernest Bevin
(1881―1951)

イギリスの労働運動家、政治家貧農の子として生まれ、農業労働者、雑役夫として働いたのち、ドック労働組合の活動家になった。運輸一般労働組合創設の中心となり、その書記長就任(1922)、さらに労働組合会議(TUC)の指導にも参画、1936~1937年にはTUC議長を務めた。1930年代にはまた労働組合や労働党内の平和主義者を抑えて、労働党を軍備強化支持へと方針転換させた。1940年労働党下院議員となり、チャーチル連立内閣の労働相として、総力戦体制確立に大きな役割を演じた。戦後アトリー労働党内閣では外相となり、アメリカ合衆国と共同歩調をとって、反ソ的な冷戦外交を展開した。

[木畑洋一]

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改訂新版 世界大百科事典 「ベビン」の意味・わかりやすい解説

ベビン
Ernest Bevin
生没年:1881-1951

イギリスの労働組合運動指導者,政治家。サマーセットの農業労働者の子。7歳までに両親とも死亡。教育を受けたのは11歳までで,13歳のとき兄弟ブリストルでみつけた日雇いの仕事をいっしょにした。トラック運転手,レストランの給仕など先の見込みのない仕事が続いた。1911年港湾労働組合の副書記長となる。21年には運輸一般労働組合を組織,書記長(1921-40)としてイギリス最大の組合に育てあげた。TUC(労働組合会議)総評議員(1925-40),議長(1937)としてイギリス労働運動を指導,1940-51年労働党下院議員,この間の1940-45にチャーチル戦時連立内閣の労働相。45-51年にはアトリー内閣の外相として親米政策をとり,西欧連合北大西洋条約機構設立を指導した。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ベビン」の意味・わかりやすい解説

ベビン
Bevin, Ernest

[生]1881.3.9. ウィンズフォード
[没]1951.4.14. ロンドン
イギリスの労働運動指導者,政治家。8歳で孤児となり,11歳から農場で働いた。1910年ブリストルの港湾運輸労働者を指導し,1922年運輸一般労働組合 TGWUを組織,1940年までその書記長,その間,1937年労働組合会議 TUC議長。1940~51年労働党下院議員となり,1940~45年ウィンストン・レナード・スペンサー・チャーチル戦時内閣の労働大臣として兵力,軍需産業などへの人員配置を指揮。1945~51年クレメント・リチャード・アトリー内閣の外務大臣を務め,親米反ソ政策を推進。1948年西欧五ヵ国条約(ブリュッセル条約)の締結,ヨーロッパ経済協力機構 OEECの設立,1949年北大西洋条約機構 NATOの創設などに努力したが,1951年健康を害して辞任,国璽尚書となった。

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百科事典マイペディア 「ベビン」の意味・わかりやすい解説

ベビン

英国の政治家。港湾労働者の組織化を進め,1921年運輸一般労働組合を結成,書記長(1921年―1940年)。1940年下院議員となり労働党右派の指導者となった。第2次大戦中は労働相。戦後外相(1945年―1951年)として親米反ソ政策をとり,マーシャル・プランを推進,NATO設立に尽力。

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世界大百科事典(旧版)内のベビンの言及

【労働党】より

…しかし大量失業に直面して蔵相P.スノードンは古典的財政政策を固守し,32年の国際金融危機では自由貿易と金本位制維持のためアメリカ,フランスの金融市場からの借入れに頼り,その条件として失業手当削減を含む緊縮財政実施を受け入れたため,労働党政府は分裂崩壊し,31年の挙国内閣(挙国一致内閣)に参加したマクドナルド,スノードンらは党から除名された。 党再建は運輸一般労組のE.ベビンら労働組合会議(TUC)評議会主導の下に行われ,産業国有化,計画経済など社会主義への移行のための政策綱領をまとめ,自由主義経済の呪縛を断ち切る一方で,絶対的平和主義者の党首ランズベリーGeorge Lansbury(1859‐1940)を辞任させ,新党首C.R.アトリーの下にファシズムの脅威に対し集団安全保障政策をとり,挙国政府の宥和政策に対抗した。第2次大戦では政治休戦に応じ,チャーチルの戦時連立内閣に参加した。…

※「ベビン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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