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「ヘルメス思想」の意味・わかりやすい解説
ヘルメス思想【ヘルメスしそう】
ヘルメス・トリスメギストスに帰せられた教説に発する秘教的思想伝統をいい,英語ではHermeticism。西暦紀元前後5,6世紀のあいだに,エジプトでピュタゴラス主義,プラトン主義,ストア主義,密儀宗教,グノーシス主義,占星術,錬金術などを摂取・統合して成立したと見られる。史料の総称が〈ヘルメス文書〉。生気論・化生論的世界観,ミクロコスモス=マクロコスモスの照応説,天体の作用力とその操作可能性の主張などに特色がある。イスラム圏,ヨーロッパにも浸透し,特にフィチーノによる《コルプス・ヘルメティクム(ヘルメス選集)》のラテン語訳は大きな影響力をもった。近代科学成立への寄与を強調するF.A.イェーツのような学者もいる。19世紀以降のロマン主義,象徴主義など芸術運動に霊感を与えた点も見逃せない。→神秘主義
→関連項目魔術|ミクロコスモス・マクロコスモス|ユング|錬金術
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ヘルメス思想
ヘルメスしそう
1~3世紀にギリシア文化圏において成立した『ヘルメスの書』のなかに見られる思想。新プラトン主義の影響が色濃く,またキリスト教,ユダヤ教,イスラム教の神秘思想も反映している。このヘルメス思想は,イスラム圏内ではシリアとアラブの文学を通じて伝播し,西欧では 1463年に完成したフィチーノのマルシリウスの手によるラテン語訳によって広まっていった。以降この考え方は,イタリアのプラトン学派やパラケルススだけでなく,レンブラント,シェークスピア,さらにはコペルニクスやケプラー,ニュートンなどといった人々にも強い影響を与えた。
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ヘルメスしそう【ヘルメス思想 Hermeticism】
ヘルメス・トリスメギストスと呼ばれるヘルメスとトートの習合神の教えと信じられた西洋の思想的伝統で,紀元前後ころ多分エジプトで成立したと考えられる。秘教として受け継がれ,ヨーロッパおよびイスラム圏で占星術および錬金術の哲学として研究され,後者ではシーア派イスラム神学と結びついて展開した。とくにルネサンス時代にイタリアで《コルプス・ヘルメティクム》が翻訳刊行されて人々に大きな影響を与え,中でもコペルニクス,W.ギルバート,ケプラーなど近代科学の創始者たちに信奉されて近代科学成立の一つの契機となった。
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世界大百科事典内のヘルメス思想の言及
【ミクロコスモス】より
…この伝統はボエティウスや新プラトン主義を介して西欧に伝えられ,中世プラトン主義の拠点となったシャルトル学派のベルナルドゥス・シルウェストリスらによって代弁された。さらにルネサンス期になると,フィレンツェ・プラトン主義者グループのフィチーノらによってヘルメス思想と融合され,ルネサンス期世界観の典型となった。たとえばレオナルド・ダ・ビンチに明らかなように,ミクロコスモスとマクロコスモスとの間には厳密な類比関係があり,両者はともに機械的ではなくて生命的な存在だとされる。…
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