プレローグ(読み)ぷれろーぐ(英語表記)Vladimir Prelog

日本大百科全書(ニッポニカ) 「プレローグ」の意味・わかりやすい解説

プレローグ
ぷれろーぐ
Vladimir Prelog
(1906―1998)

スイス化学者。ボスニア・ヘルツェゴビナサライエボに生まれる。のちにクロアチアザグレブに移り、1929年にチェコのプラハ工科大学を卒業、1935年ザグレブ大学で有機化学の講師となり、1940年に教授に昇格するが、第二次世界大戦が起き、ドイツ軍がザグレブに侵攻したため、スイスのチューリヒへ逃れた。チューリヒで連邦立理工科大学の準教授を務め、1952年教授に昇格し1976年まで務めた。1959年にスイスに帰化している。

 プレローグの初期の研究は天然化合物に関するもので、キナアルカロイドステロイドアルカロイドなど多くのアルカロイドの構造を決定した。さらに微生物の代謝生産物の研究に進み、ボロマイシンなど珍しい化合物を発見している。これらの化合物は大ないし中環状化合物であり、その合成と性質を研究、分子立体配列を表すためのRS表示法を導入するなど、立体化学において多様な研究成果をあげている。1975年「有機分子と有機反応の立体化学」の研究業績に対して、コーンフォースとともにノーベル化学賞を受賞した。

[編集部 2018年10月19日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

化学辞典 第2版 「プレローグ」の解説

プレローグ
プレローグ
Prelog, Vladimir

スイスの化学者.現在のボスニア・ヘルツェゴビナのサラエボに生まれる.1924年プラハのチェコ工科大学で化学を専攻し,1929年学位を取得.1935年ザグレブ大学で講師の職を得た.1941年第二次世界大戦の開戦によるドイツのザグレブ侵攻に伴い,スイス人の妻とともにスイスに移り,チューリヒ連邦工科大学で有機化学の研究を開始し,1952年教授となった.また,1959年,スイスで市民権を得た.おもに天然物に関心を向け,アダマンタンの合成やアルカロイドの研究を行ったが,このことにより立体化学という分野を開拓した.R.S. CahnおよびC.K. Ingold(インゴルド)とともに立体異性体の命名法について,R/S表示法を考案した.以上のような有機化合物分子とその反応の立体化学に関する研究に対し,1975年J.W. Cornforth(コーンフォース)とともにノーベル化学賞を受賞した.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「プレローグ」の意味・わかりやすい解説

プレローグ
Vladimir Prelog
生没年:1906-98

スイスの有機化学者。ユーゴスラビアのサラエボに生まれる。有機分子や反応の立体化学的研究によって,1975年度ノーベル化学賞を受ける。1924年から29年にかけてプラハ工科大学で化学を学び,博士となる。35年ザグレブ大学の工学部で有機化学の準教授,41年チューリヒに移り,連邦工科大学で有機化学の教授を務めた。ロンドンローヤル・ソサエティ,アメリカの国際科学アカデミーなどの外国会員となる。もともと複雑な立体をもった天然物や有機分子に興味をもち,アルカロイド,ヨウ素を含んでいるテルペンやステロイドなどを研究,異性化の方法や原子・分子の配列の研究に貢献した。
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