プリズム(英語表記)prism

翻訳|prism

精選版 日本国語大辞典 「プリズム」の意味・読み・例文・類語

プリズム

〘名〙 (prism prisme)
ガラス、水晶などの透明体でできた多角柱。三角柱のものが一般的。光を屈折、分散、全反射などさせる性質があり、光学機械で光線の方向を変えたり、光のスペクトル分析、屈折率の測定などに利用される。三稜(りょう)鏡。分光器
※西国立志編(1870‐71)〈中村正直訳〉五「一箇の三稜玻璃片(プリズム)、一箇の中凸玻璃片(レンズ)
② ①を通った、また、それに似た美しい光。
※往来(1946)〈永井龍男〉「日向の雪は時々プリズムになって朱に青にキラリと光る」

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デジタル大辞泉 「プリズム」の意味・読み・例文・類語

プリズム(PRISM)

米国国家安全保障局(NSA)によるインターネット監視システムの通称。正式名称US-984XN。グーグルフェースブックマイクロソフトアップルAOLヤフースカイプユーチューブなどが提供する各種サービスを対象に、利用者による文書や画像・通信記録などを収集し、安全保障上の脅威の監視を続けている。2007年より極秘に運営を開始し、2013年に報道各社によってその存在が明らかにされた。

プリズム(prism)

よく磨かれた平面をもつ透明な多面体。ガラスなどから作られ、三角柱のものなどがあり、光を分散屈折全反射させるために用いる。三稜鏡さんりょうきょう

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改訂新版 世界大百科事典 「プリズム」の意味・わかりやすい解説

プリズム
prism

滑らかに研磨された平行でない平面を二つ以上もつ透明体。用途により,分散プリズム偏角プリズム偏光プリズムなどがある。ギリシア語およびラテン語のprismaに由来し,原義は〈削る〉。起源については明らかでないが,多くの稜をもつガラスに光を入射させるとスペクトルが得られることは古くから知られていたようで,1世紀にL.A.セネカが書いた《自然の研究》にもこのことが述べられている。プリズムに関してはニュートンが行った太陽光によるスペクトルの実験が有名で,彼は第1のプリズムによって得られたスペクトルを第2のプリズムを通すと再び白色光となることから,それぞれのスペクトルはもともと太陽光に含まれており,これらが集まって白色光となることを明らかにした。

(1)分散プリズム 分散,すなわち透明体の屈折率が波長によって異なることを利用して光とスペクトルに分けるもの。研磨した二つの側面をもつ三角柱状のものがもっとも多く,分光器,分光計,屈折計などに用いられる。稜に垂直な平行光線束をプリズムに入射させると,屈折を2回受けて,射出光は入射光と異なる方向に進む。入射光と射出光のなす角は偏角と呼ばれ,プリズムの屈折率n,頂角Aおよび光の入射角の関数である。透明体の屈折率は一般に波長とともに減少するので,偏角は短波長側で大きく長波長側で小さい。そのため白色光を入射させると鮮やかなスペクトルが得られる。一定波長の光に対してはプリズムの第1面への入射角と第2面からの屈折角が等しいときに偏角が最小値δmin最小偏角という)をとり(図1),の関係式が成り立つ。この関係は分光計によって光学ガラスなどの光学材料の屈折率を精密に測定するのに用いられる。分散用のプリズムにはA=60°のものがもっとも多い。すべての波長に対して一定の最小偏角をもつ定偏角プリズムアッベのプリズムなど)も用いられる。材料としては,可視光に対しては分散の大きいフリントガラス,紫外線に対しては水晶や蛍石,赤外線には岩塩や臭化カリウムなどの結晶が用いられる。プリズムの底辺の長さをt,光の波長をλとすると,分解能は,で与えられ,回折格子や干渉計に比べてかなり小さいが,次数の異なるものはなく,ゴーストもないのでラマン散乱などの強度差の大きい分光測定などに利用される。

(2)偏角プリズム 光線束の方向を変えたり,像を正立させるのに用いるもので,全反射を利用する場合が多い。図2に示したのは頂角が90°の直角プリズムを用いて,1回の全反射を利用して方向を90°変える場合と2回の反射によって180°変える場合である。金属鏡に比べ,反射率が高く,表面の汚れを取り除くのが容易である。像の倒立を打ち消す例を図3に示す。これは2個の直角プリズムを組み合わせたものでポロプリズムと呼ばれ,進行方向を変えることなく像の上下,左右を反転させるので,双眼鏡に多く用いられる。図4は直角プリズムの直角をなす頭部が切り取られた形のドーブのプリズムである。図の配置によると,物体の上下関係は反転するが左右関係はそのままなので,プリズムを光線を軸に回転すると,物体はその2倍の角度で回転することになる。

(3)偏光プリズム 結晶の複屈折を利用して直線偏光を作るプリズムで,方解石や水晶などを光学軸に対して適当な角度に切断研磨したものを組み合わせて作る。ニコルプリズム(図5),グラントムソンプリズム,ウォラストンプリズム,ロションプリズムなどがある。ニコルプリズムは,方解石から作った同形の2個のプリズムをカナダバルサムで接合し,接合面で全反射された常光線を側面で吸収させ,異常光線だけを取り出して使用する。偏光プリズムの特徴はポーラロイド(商品名)と比べて波長特性がフラットで透過損失がないばかりでなく,取り出した直線偏光の純度が高いことである。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「プリズム」の意味・わかりやすい解説

プリズム
prism

なめらかで均質な,光学的平面を二つ以上もつ透明体で,少なくともその1組の面が平行でないもの。光を屈曲,分散,全反射させるために用いる。光学ガラスのほか,紫外線には水晶,赤外線には岩塩などが使用される。 (1) 光を分散させてスペクトルに分けるものには,二つの面を研磨した三角柱状のものが多く,分光器,分光計,屈折計などに用いられる。図においてαを頂角といい,入射角 i で一辺に入射した光は,媒質の屈折率 n が波長によって異なるため,各単色光に分かれて異なった偏角δの方向に出てゆき,分散が生じる。δは入射角 i によっても変化するが,単色光を用いていろいろの入射角 i で入射させるとき,i をいかに変化させても偏角はある一定の値 δ0 より小さくはならないという性質がある。 δ0 を最小偏角と呼び,その値は次式のように屈折率 n と頂角αの大きさのみで決まる。この関係式は媒質の屈折率の測定に利用される。プリズムを使った分光器の分解能はプリズムのサイズに比例するので,高い分解能を得るためには大きな素材を必要とする。このため分解能を上げるには回折格子干渉計のほうが有効である。 (2) 全反射を利用して,光線束の方向を変え,または像を正立させるためのものには,正立プリズムと五角プリズムがある。正立プリズムには,ポロ型,アッペ型,アミーチ型,ヘンスオルト型などがあり,望遠鏡などで倒立像を反転させるために用いる。レンズ系で正立させる場合よりも,望遠鏡体を短くできる。五角プリズムは光線束を反射させて,進行方向を一様に 90°変え,像は倒立しない。全反射をしないので,反射を増すため銀メッキする。測距儀一眼レフカメラなどに用いられる。 (3) 偏光をつくる偏光プリズムは,方解石,水晶など複屈折性の結晶を使ってつくり,直線偏光を取り出すのに用いる。ニコルのプリズムロションプリズムなどがある。

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百科事典マイペディア 「プリズム」の意味・わかりやすい解説

プリズム

なめらかにみがいた平面を二つ以上もつ透明体。分光器に用いるプリズムは多くは三角柱体で,可視光線にはガラス,紫外線や赤外線には水晶や岩塩でつくる。ほかに光線の方向を変える全反射プリズムペンタプリズム,偏光をつくるニコルプリズムなどがある。
→関連項目回折格子回折スペクトル石英ガラス

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デジタル大辞泉プラス 「プリズム」の解説

プリズム〔小説:神林長平〕

神林長平による長編の幻想SF小説。1986年刊行。翌年、第18回星雲賞日本長編部門賞受賞。

プリズム〔小説:百田尚樹〕

百田尚樹の小説。2011年刊行。多重人格を題材とするミステリアスな恋愛小説。

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