プラスチック廃棄物(読み)プラスチックはいきぶつ

改訂新版 世界大百科事典 「プラスチック廃棄物」の意味・わかりやすい解説

プラスチック廃棄物 (プラスチックはいきぶつ)

企業からの産業廃棄物としてのプラスチック廃棄物は年間500万t以上に達すると推定される。企業からのプラスチック廃棄物は,比較的種類,量がまとまっているため,処理もしやすく,回収再使用されたり,より低品質の成形品ブレンド使用されたりする。またベンチや棒杭のような雑品に再生使用されることもある。企業にとって,いかに高付加価値製品へ再生使用するかは採算的にも重要な問題である。これに対し,一般家庭や農家などの末端消費者から出るプラスチック廃棄物は,広く全国に分散し,かつ他のごみと混合しているために,収集,再生使用が困難である。また,発泡プラスチックフィルムなどは容積面積が大きいため,自然破壊の大きい要因となっている。天然物に比し,プラスチックは分解しにくいこと,さらに使いすて方式が多いことがこれに拍車をかけている。

 処理方法としては,埋立て,焼却があるが,かさ高いものが多く,かつ分解しにくいので埋立ては非効率である。一方,焼却も,塩化ビニル樹脂のように燃焼すると塩化水素のような腐食性ガスを発生するもの,ポリスチレンのようにすすを出しやすいもの,ポリエチレンのように発生熱量が大きく,炉をいためやすいものがあり,必ずしも得策でない。結局,紙のようにプラスチックの回収処理システムが経済的に成り立つようにすること,容器類は再使用できるようにすること,分解しやすいプラスチックをつくること,ごみの分別回収を行うこと,プラスチックの熱分解生成物の再利用,燃焼エネルギーの活用などが検討されている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「プラスチック廃棄物」の意味・わかりやすい解説

プラスチック廃棄物
プラスチックはいきぶつ
waste plastics

プラスチック製品の廃棄物。老化,分解,腐食がほとんどないのが特色。現在,一般廃棄物に 10%前後含まれているが,埋立てではまったく腐食しないためそのまま残り,処分の方法がない。特に塩化ビニル系の高分子は,焼却炉内で高熱を発生させ,また塩化水素を発生させて焼却炉を損傷させる。都市の焼却場では排出口で塩化水素が 500ppmをこえて大気汚染の原因ともなる。また,種類が多いうえ,選別がむずかしく,それぞれ性質を異にするため処理が円滑に進まない。乾留して石油に還元する方法も試みられているが,全面的実用化には程遠く,塩化ビニル系のものから塩を取出す方法が実用化しているが,製品の処置などをめぐって,本格化するまでにはまだ時間を要する。

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