日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
プラグマティズム(W・ジェームズの著作)
ぷらぐまてぃずむ
Pragmatism
アメリカの哲学者W・ジェームズの著作。1907年刊。プラグマティズムの定式化として有名なパースの論文「観念を明晰(めいせき)にする方法」(1878)に独自の解釈を加え、ジェームズ自身の立場を明らかにした著作として、哲学史上に確たる位置を占める。パースが観念の意味はその観念の対象がもたらす実際的結果であるとしたのに対し、ジェームズはその観念を信じることから結果する情緒的な反応もまた観念の意味であるとし、いかなる観念でも、それを信じることによって有用な結果をもたらすならば、その限りにおいて真理であるとした。かくして、プラグマティズムは真理と有用とを混同する学説にすぎないという一面的理解が生まれることになったが、そもそも真理は人間生活における有用性という大地に根ざしていることの指摘は、その後、経験主義的な哲学説に大きな影響を与えた。
[魚津郁夫]
『桝田啓三郎訳『プラグマティズム』(岩波文庫)』